2023 02 HREIFPASELL発表資料第7章

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February 03, 24

スライド概要

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教育方法学・教科教育学という「一般的な教育」と,外国人児童生徒教育学という「特別な教育」をどちらも行っています。 このどちらもを同時に行う研究室は,日本の中ではほとんどありません。その結果,大学を含む多くの教育の場でこの両者は別々のものになってしまっています。

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各ページのテキスト
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【おねがい】この資料は,広島大学大学院 人間社会科学研究科 2023年度 2ターム「外国人児童・生徒の教育課程デザイン特論」(南浦涼介 担当)の授業で行ったが受講大学院生たちの発表資料です。 Grace Onchwari, Jared Keengwe (2019). Handbook of Research on Engaging Immigrant Families and Promoting Academic Success for English Language Learners, IGI GLOBAL の研究ハンドブックのいくつかの章を選んで発表したものです。 教育的価値,資料的価値としてウェブでの掲載を行っておりますが,いわゆる「論文」ではありませんので,論文等への引用や掲載は固くお断りい たします。また,分析対象の著作権は著 作者,資料文書の著作権は発表者に記しますので,無断転載はご遠慮ください。 質問については,広島大学南浦研究室(http://minamiura-lab.com)までお願いいたします。 2023 外国人児童・生徒の教育課程デザイン特論 発表日付 2023 年 7 月 14 日 発表メンバー 阿●●● ●●木●● オールイングリッシュな教室における同伴者のいない未成年者の現実とニーズの捉え方 Recognizing the Realities and Needs of Unaccompanied Minors in the AllEnglish Classroom 1 筆者情報 ・名前: Rebecca E. Linares ・職位: Assistant Professor in Equity, Bilingualism & Biliteracy in the School of Education at the University of Colorado Boulder ・研究のキーワード: 多言語話者,トランスランゲージング ・主な著書・論文: Linares, R。 E。 (2022)。 Factors shaping bilingual and ESL teachers’ perceptions of successes and barriers in meeting emergent bilingual students’ needs。 The Journal of Latinos and Education。 (バイリンガル教師と ESL 教師が,バイリンガルの初級生徒のニー ズを満たすことに成功と障壁を感じていることを形成している要因) Linares, R。E。 (8 November 2021, Online First)。 “Para que los demás se diviertan un poco”: Negotiating social interactions in a culturally and linguistically diverse classroom。 Language, Identity, Education。 (「他の人が少しでも楽しめるように」文化的,言語 的に多様な教室における社会的相互作用の交渉) Linares, R 。E 。 (2021) 。 “Every Good Learner Uses Resources”: Leveraging student interjections to provide scaffolding in a U。S。 sheltered English classroom。 Pedagogies: An International Journal, 16(4), 327-346。 ( 「優れた学習者はみなリソースを使う」 : アメ リカの保護された英語教室で,生徒の発話を活用して足場かけを行う) 2 文献の目次構成 要約 はじめに 各章の概要

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・第 1 部: 「同伴者のいない未成年者」とは?同伴者のいない子どもの入国審査について ・第 2 部:同伴者のいない未成年者に意味のある指導とは?対話日誌を通して生徒の既存 の知識体系を構築する 対話日誌の結論 結びの言葉 参考文献 注 3 文献の要約 3. 1 要約 米国の教室で増加している英語学習者(ELL)の集団, すなわち中央アメリカの北方三角地帯(ホンジュラス,グ アテマラ,エルサルバドルを指し,母語はスペイン語)か らの同伴者のいない未成年者について言及する。第 1 部で は,米国とメキシコの国境沿いの収容施設から,全米のコ ミュニティや教室に子どもたちがどのようにやってくる のかについての移民プロセスについて説明するなど,同伴 者のいない未成年者についての背景情報について言及す る。第 2 部では,2015 年から 2016 年にかけて実施した研 究を通じて収集した実証的データをもとに,学校教育を継 続的に受けられていない同伴者なしの未成年者を対象と https://globalnewsview。org/archives/6086 した,教室での対話日誌という一つの教育的実践に焦点を あてる。 本日の発表内容 ⚫ 中央アメリカの北方三角地帯諸国からの同伴者のいない未成年者の法的背景や不安定 な状況について ⚫ 生徒の背景やアイデンティティに関する情報を収集しながら,生徒を有意義な学習に 参加させるための教育実践 3. 2 第 1 部: 「同伴者のいない未成年者」とは?同伴者のいない子どもの入国審査につ いて このセクションでは,2014 年夏以降,中央アメリカの北方三角地帯出身の約 68,000 人も の同伴者のいない未成年者が米国とメキシコの国境でとらえられたのかを説明する。具体 的には,①同伴者のいない未成年者とはだれなのか,②なぜ彼らは米国とメキシコの国境を 目指すのか,③同伴者のいない未成年者が米国内で教育を受けるにあたっての困難につい て言及する。

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① 一人旅の未成年者とはだれなのか 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は, 「18 歳未満で両親から離れ,法律や慣習によ って責任を負うべき大人によって世話されていない」子どもを,同伴なしの未成年者と定義 している。米国では,2008 年ウィリアム・ウィルバーフォース人身売買被害者再許可法 (TPRA)に基づき,メキシコやカナダ以外の国から一人で米国国境に到着したすべての子 どもたちが,移民審査を行う機会を法的に与える権利を持っている。この法案は,もともと 性犯罪撲滅のために書かれたもので,メキシコやカナダ以外の国の一人旅の未成年者を直 ちに出身国に送り返すことを禁止している。 したがって,中央アメリカの北方三角地帯出身の未成年者が米国の国境で自首した場合, その同伴者のいない未成年者は 72 時間,国境警備隊の捜査官に拘束され,その間に国境警 備隊はその未成年者の年齢と移住の理由を判断する。同伴者なしの未成年者は,権利の説明 と無料の法律サービスのリストを与えられることになっており,その時点で未成年者は庇 護請求(保護してほしいと願い出ること)を行うかどうかを示すことができる。未成年者が 請求した場合,同伴者のいない未成年者は,スポンサーに解放される手配が整うまで保健福 祉省の難民定住局(ORR)で一時的に保護される。 近年,一人旅の未成年者による米国到着者数が増加している。2014-2015 年度以降,推定 で 13 万 5589 人の未成年者が保護されたとされている。また,未成年者だけでなく,成人 や家族単位の移民も増加しており,これにより移民裁判所の未処理ケース数は過去最高に なっている。移民裁判所の審査待ちのケース数は急増しており,2018 年においては最初の 2 か月間だけで 65 万 8728 件に達した。これにより,個々のケースの審査完了までの待ち 時間は長くなっている。 ② なぜ彼らは米国とメキシコの国境を目指すのか 中央アメリカの北方三角地帯からの未成年者の多くは,母国と米国の両方で,歴史的(例 えばグアテマラ内戦)および経済的(例えば中米自由貿易協定)な決定が,母国で生活でき ないことに大きく影響し,それが経済不安や暴力を増大させてきた。実際,エルサルバドル, グアテマラ,ホンジュラスは,世界で最も暴力的な国の中に常にランクされている。これら の国々は暴力が横行しており,若者たちはギャングや麻薬組織による脅威,家族内の虐待と いった過酷な状況に直面している。したがって,多くの人が母国を離れることが唯一の選択 肢だと感じるようになった。 ③ 同伴者のいない未成年者が米国内で教育を受けるにあたっての困難 米国内のすべての子どもは,市民権や移民状況に関係なく,公立学校に入学する権利を持 っており,同伴者のいない未成年者も米国の学校に入学することが勧められている。しかし ながら,現状として州や地区によっては,移民の子どもが学校に通うことを妨げられている。 例えば,オクラホマ州では移民が正規の市民であるのかどうか確認する動きがあり,これに

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よって子どもたちの学校へ通うことに影響が及ぶ可能性がある。 また,同伴者のいない未成年者が米国内で教育を受けるのに伴い,多くの学区では,担当 する生徒の文化的,言語的背景やニーズが変化している。同伴者のいない未成年者である生 徒のニーズは,教育的なもの(例えば,小学校 6 年生までの教育しか受けていない)だけで なく,社会情緒的なものもある。多くの生徒が, 「覚えていないかもしれない」,あるいは実 際にまったく知らない親(または保護者)と共に,まったく見知らぬコミュニティに飛び込 むにあたり,トラウマやカルチャーショックを経験しているという現実がある。このような 現実を踏まえると,教師は同伴者のいない未成年者の,入学前の生活を構成する身体的・精 神的な負担について理解することが重要である。また,次のセクションで述べるように,教 師がこれらの同伴者のいない未成年者を歓迎していると感じられる教室環境を作り,適切 な指導を行うことが重要である。 3. 3 同伴者のいない未成年者に意味のある指導とは?対話日誌を通して生徒の既存の 知識体系を構築する ここでは,多言語話者であるグアテマラ人の未成年者の学校教育経験等を探った 1 年間 のエスノグラフィーケーススタディで集めたデータ群をもとに説明をする。 このセクションでは,以下の 2 つを説明する: 1)同伴者のいない未成年者のためのより良い教室環境の作り方 2)対話日誌の効果とその導入方法 教室の状況 今回,ここで扱うデータは,モノリンガルのアメリカ人女性教師(ローズウォール先生) が指導する社会科のクラスを対象としている。また,ここでは,3 人の生徒の対話日誌を紹 介・分析を行う。 同伴者のいない未成年者との対話日誌 ローズウォール先生(以下,先生)は,生徒が温かく迎え入れることのできる教室環境を 作ることに加え,生徒が自身の経験と学習を結び付けれるような学習環境を作ることを目 指した。 そこで,教室の内容と学校外での生活や経験を結びつけるための手段として対話日誌を 行った。対話日誌は,文化的・言語的に多様な生徒に対して特に効果的な実践方法とされて いる。 対話日誌とは まず,対話日誌では,同伴者のいない未成年者が母国から持ち込んだ独自の知識体系や経 験を持っていることを認識することから始まる。このような既存の知識を基に,生徒が安心

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して自己表現できるような安全で協力的な環境を作ることが重要とされている。 対話日誌では,生徒と教師は,書かれた日誌を通してコミュニケーションをとる。生徒は, 自分の考え,感情,経験,疑問などを書き,その日誌を教師と共有する。教師はそれに対 して,フィードバックやサポート,追加情報などを書き添える。 このようなプロセスを通じて,対話日誌は有意義な意見交換を可能にし,生徒の背景や課 題をより深く理解することができるようになる。また,教師からの指導を受けながら,目標 言語(例:英語)で書く練習をすることで,言語能力の発達にもつながる。 対話日誌の授業 対話日誌の授業は,読み書きの練習の場であることを強調し,必要なサポートを状況に応 じて提供しながら授業を行った。先生は,生徒に対話文の書き方を教えることで,一般的な 疑問詞(誰が,何を,どこで,なぜ,どのように)になれさせることで,なるべく授業が円 滑に進むように工夫した。 先生は,自分が文章を書く際に行っている行動を,音読とディスカッションを通じて説明 して生徒たちに理解させ,生徒たちに文章を書くプロセスを具体的に説明した。この方法は, 生徒たちが自分で文章を書くための理解を促すインプットとなった。生徒たちは,この方法 を理解した後自分の文章を書いた。また,この授業は英語で行われたが,先生は以下のよう なことを生徒に呼びかけた: ・言語を使って遊ぶチャンスであること ・自分の考えを探求するチャンスであること ・好きな言語で書いてもよい(コードスイッチを許可) このように,生徒自身が対話日誌の書き方をコントロールできるようにすることで,ネガ ティブな感情(書くことへの不安,自信の欠落など)を下げ,学校教育への興味を持たせる ことが可能になる。さらに,授業で扱うテーマについて,生徒がどんな経験や知識を持って いるかを知ることができる環境となっている。 また,先生は生徒の日記を回収し,英語でフィードバックを提供し,生徒の成長を評価・ 観察をした。さらに,書くことに興味をもたせるために,生徒の言語によって書くことを奨 励し,生徒の作品を理解するために初歩的なスペイン語の知識や外部リソースを使い,生徒 が書いた文章に関する質問を投げかけながら理解を深めていった。 対話日誌の執筆例 先生が 3 人の生徒と行った対話日誌の執筆例を紹介する。テーマは「山」について書くよ うに指示を出している。 「マーロンの日誌」

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マーロンは山をテーマに,以下のようなことについて書き記している: ・グアテマラに強制送還された後,家に帰るまでの間に起こった感情的な体験 ・友人と一緒に友人の故郷まで旅をしたこと ・山歩きの大変さ “移民であるがゆえに”というタイトルも,彼が自分自身をどのように見ているか,移民とい う立場と世界との関係をどのように認識しているかを示している。 タイトル:移民であるがゆえに ―ある日,入国管理局が私たちを[redacted location]で捕まえたの。そこで友だちに会ったん だけど,グアテマラの中心部だから遠くて家に帰りたくなかったから,友だちが来て,彼の 家に行っていいよと言ってくれた。彼は山の中に住んでいて,何時間も歩かなくちゃいけな かったんだ。 原文-タイトル:En Juatema el pase con un Amigo por ser emigranTes ―Un dia que nos aJaro miJrasion en [redacted location] ay conosi a un amijo Pero como yo no me quice yr para mi casa porque quedava legos era en el mero sentro de Guatemala y vino my amiJo me digo que me fuera para sucasa era un pueblo muy sercano de mexico que se yamava [redacted location] serca de la Frontera de mexico y el me digo bamos te embiTo a ir a mi casa y yo me Fui el bibia entre las montañas Tuve que caminar por oras y nunca que llegava yo ya me avia cansado pero por Fin yegamos y hotro dia me llevo ala montaña mas alta de Ai de [redacted location] semirava Todo el pueblo y Toda la frontera de Mexico 。 「エリアスの日誌」 エリアスは山をテーマに,友人や家族と山で楽しんだ思い出について書き記している。 彼にとって山は,グアテマラの地形に関する授業で学んだ抽象的な概念ではなく,自分の生 活体験の一部であり,母国での生活で大切にしてきた多くの温かい思い出の源であったこ とがここからわかる。 エリアスの対話日誌からは,英語とスペイン語でコードスイッチを行っていることがわ かる。これは,自分の経験を伝えたいという気持ちと,自分が学んだことを先生に見せたい という気持ちの現れでもある。 タイトル:山 ―弟とおじさんと友達と一緒に山に登ったことがあるのですが,みんなと一緒に週末にや ると楽しくて,なんだかんだでいい思い出が心に残っています。 原文-タイトル: Mountain

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―Me esubido en una mountain junto con mis brother con mis onco con mis friends y nos divertimos mucho con todos ellos y lo aciamos los fines de semana y nolas pasabamos goodgood con todos ellos y que good recuerdo sequeda en el corazón。 「ラファエルの日誌」 ラファエルは山をテーマに,以下のようなことについて書き記している: ・父親が祖父から山を譲り受けたこと ・山で家族と過ごした思い出 彼の日記からは,先祖代々の土地だけでなく,何世代にもわたる家族との強い感情的なつ ながりが表現している。また,エリアスと同じように,スペイン語にかかれている文章に英 語に語彙を挿入することで,コードスイッチを行っていた。 タイトル:なし ―祖父が父に山をプレゼントしてくれたのですが,山頂まで登ってしまいました。 山はとてもきれいで,壮大な景色が広がっています。私は山がとても好きで,頂上に登るの が好きです。 原文-タイトル: なし ―Mi grandfather a mi father le regalo una mountain pero asta en la sima y yo quero mucho a mi grandfather y a mi grandmother y a mi father y a mi mother。 lA mountain。 es muy lindo tiene un gran paisaje y a mi me like mucho la mountain y me like subir asta ariba es muy divertido subir asta ariba a mi si me like subirme asta ariba a mis brother no mucho les like 対話日誌の全体像 生徒の日誌には,先生が紹介したトピックや,生徒が選択したトピックに関連する学校外 での生活を,自由記述で共有することで,個人レベルで先生と関わろうとする意志が感じら れた。 また,日誌には,教室で自分の居場所を見つけるために努力を続ける同伴者のいない未成 年者が直面するユニークな経験や課題が書かれていた。生徒がこうした経験を共有する場 を設けることで,先生は生徒を教室の学習者としてだけでなく,一人の人間として知ること ができた。 対話日誌の利点 生徒が対話日誌にどのように参加し,何を共有したいかを決めることで,先生は生徒の学 校外での生活,興味,関心について多くを知ることができた。以下では,対話日誌の利点に

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ついていくつかの例を挙げる: ・信頼関係の構築: 日誌では,生徒は自由に自分を表現することができる。また,生徒と教 師の間に信頼関係を育むことができる。 ・生徒の経験を大切にする: 対話日誌は,生徒の既存の知識や経験を大切にしている。生 徒が自分のストーリーや視点を共有する場を提供しているともいえる。 ・個別対応: 教師は,生徒の特定のニーズや関心に対応するために,調整することが可能 となる。また,生徒の書いた文章をもとに,励まし,質問に答え,指導することができる。 ・言語の発達: 書くこと,フィードバックを受けることを通して,生徒は標的言語(例: 英語)の言語スキル,語彙,文法,表現力を向上させることができる。 ・自己反省の機会を得る:自己反省の機会を与えることで,生徒のアイデンティティ,主体 性などを養うことができる。 4. 結論 同伴者のいない未成年者や移民の生徒たちは,不安定な環境で生活することが多く,教師 や学校関係者は,教室や学校で生徒の社会情緒的ニーズや発達を支援することが重要であ る。背景の知識や経験を引き出し,それを基にした学習課題(例:対話日誌)に取り組む教 室空間を意図的に作ることで,生徒が自分自身を見つめたり,背景の知識や経験を活かして 学ぶことができたりするような環境を作ることが可能となる。 5. どのような論点争点があるのか? ・あなたなら、背景の知識や経験を活かして学ぶことができるような環境を作るためにはど のような工夫を用いるか? ・「同伴者のいない未成年者の入学前の生活を構成する身体的・精神的な負担について理解 することが重要」という主張を受け,日本の文脈で,外国人児童生徒の背景を理解するため に必要なこととは何だろうか?具体的な手立ては?