Beers紹介
あなたにとってBeersとは?
わたしにとってBeersとは
Beers criteriaとは? アメリカ老年医学会が作成している 65歳以上を対象に使用を避けるべき薬剤が載っている一覧表 PIM(Potentially Inappropriate Medication)を減らすのが目的 2023年にアップデート
実は日本版が2月に発売した!!! https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/112205
ということで今回は薬について みんなで楽しく話せたらと
抗凝固薬
腎機能正常な非弁膜症性心房細動の抗凝固薬は?
Common Diseases Up to date
ワルファリン (推奨) VTEまたはNVAFの治療のための初回治療としてワルファリン を開始することは 他の選択肢(例えばDOAC)が禁忌または障害がない限り避けるべき。 (根拠) DOACと比較すると、大出血(特に頭蓋内出血)のリスクが高く NVAFとVTEの治療効果は同等か低い
リバーロキサバン(イグザレルト®︎) (推奨) 非弁膜症性心房細動またはVTEの長期治療にはリバーロキサバンを使用せず より安全な抗凝固薬(他のDOAC)を使用することを推奨。 (根拠) DOAC、特にアピキサバンよりも高齢者における大出血および消化管出血の リスクが高い
ダビガトラン(プラザキサ®︎) (推奨) NVAFまたはVTEの長期治療において 他のDOAC(例:アピキサバン)よりもダビガトランを選択する場合は注意が必要。 (根拠) ワルファリンと比較して消化管出血のリスクが高く アピキサバンと比較して消化管出血および大出血のリスクが高い。
エドキサバン(リクシアナ®︎) 80歳以上の NVAF患者に対する エドキサバン15mg 少量でのエビデンスが 豊富
アピキサバン(エリキュース®︎) 腎排泄が一番少ないのが一応売り 海外では透析例でも使用されている 日本内科学会雑誌107巻第5号
アピキサバンは出血リスク低い データが多い
個人的に(特に腎機能悪い時は) アピキサバン vs エドキサバンになることが多く 減量基準に当てはまる方を使用している あとはコンプライアンスを意識(2回飲めるか) Common Diseases Up to date
リバーロキサバン(イグザレルト®︎)日本では・・ 日本のGeneral practitionerの臨床成績報告 リバーロキサバンを使用されたNVAF患者で 脳卒中/全身性塞栓症少ない 大出血を含む有害事象は少ない 日本のリアルワールドでは良いと言われている・・ https://doi.org/10.1253/circj.CJ-20-1244
腎機能良すぎても良くない?
腎機能良すぎても良くない? エドキサバンは 腎機能が正常(95mL/分以上) は避けるべきと言われる (塞栓予防効果下がる) Journal of the American Heart Association. 2020;9:e017559
高齢者ではワーファリンはDOACに変更すべき?
高齢者ではワーファリンはDOACに変更すべき? (推奨) ワルファリンを長期間使用している高齢者では 特にINRが良好にコントロールされ(治療域にある時間が70%以上) 副作用がない場合には、この薬物療法を継続することが妥当。
年齢75歳以上+GFIスコア3以上のフレイル患者を対象 NOAC切り替え群(15.3%)はVKA継続群(9.4%)に比べ大出血または対応を要する非大出血合併症が (主には消化管出血と皮下出血が)有意に多い(P=0.00112), HR=1.69(95%CI 1.23-2.32) ※血栓塞栓イベントに有意差なし、HR=1.26(95%CI 0.60~2.61)
高齢者ではワーファリンはDOACに変更すべき? (推奨) ワルファリンを長期間使用している高齢者では 特にINRが良好にコントロールされ(治療域にある時間が70%以上) 副作用がない場合には、この薬物療法を継続することが妥当。 特にフレイル高齢者では出血が増える。
DOACが不適切な時はいつ?
DOACが不適切な時はいつ?
PPI
PPIは副作用がない薬?
PPIは副作用がない薬? (推奨) CDI、肺炎、消化器悪性腫瘍、骨量減少、骨折、吸収不良(Mg、B12、Fe)など のリスクとなり不要な処方は避ける。 ※高リスクの患者(経口コルチコステロイドやNSAID、一部の抗血栓薬の慢性使用) びらん性食道炎、Barrett食道炎、病的な胃酸分泌過多状態 維持療法の必要性が証明された場合(薬剤中止試験やH2受容体拮抗薬の失敗など) は許容される。
PPIは副作用がない薬? (推奨) CDI、肺炎、消化器悪性腫瘍、骨量減少、骨折のリスクとなり不要な処方は避ける。 慢性下痢では顕微鏡的大腸炎を意識する
70歳男性、脳梗塞既往あり バイアスピリンとランソプラゾールを内服中 誤嚥性肺炎で入院しCTRXで治療中
70歳男性、脳梗塞既往あり バイアスピリンとランソプラゾールを内服中 誤嚥性肺炎で入院しCTRXで治療中
Jama Network Openから
心室性不整脈または心停止:3.4% vs 1.2%(p<0.001) 調整RR2.2(95%CI 1.7-2.7), 調整リスク差1.7%(95%CI 1.7-2.8) 全院内死亡:19.9% vs 10.1%(P<0.001) 調整RR1.6(95%CI 1.5-1.7), 調整リスク差7.4%(95%CI 6.1-8.8) Anthony D. JAMA Netw Open. 2023;10:e2339893
以前からCTRX+ランソプラゾールで hERGカリウムチャネルを阻害し QT延長を起こすことは知られていた 今回はQT延長は確認していない 心室性不整脈または心停止:3.4% vs 1.2%(p<0.001) 調整RR2.2(95%CI 1.7-2.7), 調整リスク差1.7%(95%CI 1.7-2.8) 全院内死亡:19.9% vs 10.1%(P<0.001) 調整RR1.6(95%CI 1.5-1.7), 調整リスク差7.4%(95%CI 6.1-8.8) Anthony D. JAMA Netw Open. 2023;10:e2339893
PPIは副作用がない薬? (推奨) CDI、肺炎、消化器悪性腫瘍、骨量減少、骨折のリスクとなり不要な処方は避ける。 慢性下痢では顕微鏡的大腸炎を意識する CTRXとランソプラゾールは心室性不整脈リスクかも 他のPPIに変えるのは検討
PPI始めて切り忘れる代表シチュエーションは?
PPI始めて切り忘れる代表シチュエーションは? SUP-ICU Stress Ulcer Prophylaxis
2月のCritical Care Medから 2017年1月-2018年12月までにドイツのICUで治療を受けた重症患者11576例を対象 2年間の追跡を行い不要なPPI継続の影響を調べた後方視的コホート研究 Crtical Care Med. 2024 Feb 1;52(2):190-99.
退院後8週以上PPI継続:41.7% 肺炎↑(OR1.27;95%CI、1.15-1.39;p<0.001) 心血管イベント↑(OR 1.17;95%CI、1.08-1.26;p<0.001) 再入院↑(OR 1.35;95%CI、1.23-1.47;P<0.001) Crtical Care Med. 2024 Feb 1;52(2):190-99.
2年死亡リスク↑ (HR1.17;95%CI、1.08-1.27;p = 0.006) Crtical Care Med. 2024 Feb 1;52(2):190-99.
足し算が良くない薬
K保持性利尿薬+〇〇=高K血症
K保持性利尿薬+〇〇=高K血症 A:ACE-i/ARB (推奨) CKDStage3a以上の患者では RAS阻害薬とカリウム保持性利尿薬のルーチンの同時使用を避ける。
Li+〇〇=血中濃度↑
Li+〇〇=血中濃度↑ A:ACE-i/ARB 、ループ利尿薬 (推奨) Li血中濃度が上昇するため避けるべきであり 使用する場合は定期的にリチウム濃度をmonitorする。
フェニトイン+〇〇=血中濃度↑
フェニトイン+〇〇=血中濃度↑ A:ST合剤 (推奨) フェニトイン血中濃度が上昇するため避けるべきであり 使用する場合は定期的にリチウム濃度をmonitorする。
テオフィリン+〇〇=血中濃度↑
テオフィリン+〇〇=血中濃度↑ A:シメチジン、シプロフロキサシン (推奨) テオフィリン血中濃度が上昇するため避けるべき
ワルファリン+〇〇=出血↑
ワルファリン+〇〇=出血↑ A:アミオダロン、シプロフロキサシン マクロライド系薬剤(AZMを除く) ST合剤、SSRI (推奨) 出血リスクが上昇するため避けるべき、INRを短期的にもモニタリングする
最後にBeers criteria の原則について
最後にBeers criteria の原則について Beers criteriaはとても大切です 意識するとPIMを減らせると思います ただし、絶対的に処方が不適切ではなく 社会的なことも含め、Beers criteriaを参考に 総合的にベストな判断が重要ですね
今日覚えて帰って欲しいこと ・いつも心に薬 ・病気を見たらまずは薬のせいと思え ・でもBeers criteria警察になってはいけない