Primary bacteremia

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November 23, 23

スライド概要

Primary bacteremiaについて

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各ページのテキスト
1.

5+1には0.5がある

2.

みなさん、こんな経験ありませんか? • 当直終わった翌⽇・・・

3.

あ、もしもし・・・ 細菌検査室です ⾎培陽性の報告です

4.

2/2でGPC clusterが ⽣えています GPC cluster!

5.

ということがないように ⾎培陽性にびっくりしない primary bacteremiaがあることを知る

6.

2/2でGPC clusterが ⽣えています ですよね〜 だと思いました

7.

今⽇の内容 ①感染症診療の5原則のおさらい ②Primary bacteremiaについて ③症例を通じてPrimary bacteremiaのゲシュタルトを学ぶ ④ Primary bacteremiaを疑い、菌の想定を⾏い、治療する

8.

感染症診療の原則 ①患者背景 ②感染臓器・部位 ③原因微⽣物 ④適切な治療 ⑤適切な経過観察

9.

①患者背景 ・⼀番重要 ・いわゆる「⼈となり」 ・具体的に3つに分けて考える (1)免疫状態 (2)曝露 (3)余⼒

10.

②感染臓器・部位 ・病歴や⾝体所⾒、検査から focusを検討する ・市中感染と医療施設内の 感染は分けて考える ・市中感染であれば、5+1 -中枢神経 -肺炎 -胆管炎 -尿路 -⽪膚軟部組織

11.

②感染臓器・部位:PSとSS PS:5+1を探す SS:頭の先からつま先まで じっくり診察 キーワードは ⼀⼿間かける診察

13.

エントリー不明の菌⾎症を狙って待つ

14.

③原因微⽣物 ・患者背景とfocusがわかれば、 微⽣物を想定することができる ・培養検査とグラム染⾊が重要 ・focusと疑っている臓器からの 検体採取を⼼がける ・迅速検査、PCRなどを上⼿に使う ・検体が取れなければ、 疫学データと過去データから推測

15.

④適切な治療 ・感染部位と微⽣物で病名になる →肺炎+肺炎球菌=肺炎球菌性肺炎 ・治療に⼊る前に患者背景に戻る ・余⼒、全⾝状態をみて抗⽣剤を エンピリックにする時もある ・肝機能、腎機能、他の薬の相互作⽤、 アレルギーなどから抗⽣剤を調整する ・感染症の1stの治療は抗⽣剤ではない ドレナージ、デブリードマン

16.

⑤適切な経過観察 ・適切なパラメーターで経過を追う ・経過観察するものは全⾝状態 診断した根拠、微⽣物 ・病気の⾃然経過を知る必要がある 例)腎盂腎炎はすぐには解熱しない レプトスピラは抗⽣剤治療後に 状態が悪化することがある

17.

Primary bacteremia

20.

Primary bacteremiaの 典型的なゲシュタルト

21.

外来のPrimary bacteremiaの場合、 臨床経過は⾮常に似通っている

22.

症例① リウマチで ⽣物製剤使⽤中の⾼齢⼥性 直前までお寿司⾷べていたのに・・

23.

70歳 ⼥性 主訴:吐き気、震え 昼⾷にお寿司を⾷べに⾏った 急に寒気や吐き気 悪寒戦慄あり 発熱なし 痛みの訴えなし CT、⾎液、尿でフォーカス不明

24.

その後、ショックに ICU⼊室 腹痛・背部痛が出現

25.

後腹膜筋膜炎

26.

⾎培:Streptococcus dysgalactiae

27.

感染症誌 91:553~557,2017〕

28.

市中で68%が ⽪膚軟部組織 感染症由来 市中で9.8% 院内で41%が Primary bacteremia 感染症誌 91:553~557,2017〕

29.

Primary bacteremiaと⽪膚からがほとんど 感染症誌 91:553~557,2017〕

30.

Primary bacteremiaを 最初の時点で診断するためには

32.

でも実はfocusがあることが多い • 押してようやく分かる程度の紅斑の蜂窩織炎 • 痛いと⾔わない⽿下腺炎 • CVA巧打痛はないが、左右差のある腎盂腎炎 Primary bacteremiaの診断に必要なのは、 ⾃分の診察にどれだけ⾃信が持てるか

33.

⾼齢者の菌⾎症のプレゼンテーション • ⾼齢者には若年患者とは異なり、症状が少ない傾向がある • 感染病原体に対する⽣理的反応が変化しているため • 熱が出にくかったり、意識障害が多い • 発熱:75%、低体温:0.3-10% • 寒気:35%未満 • 意識障害:21-26%(85歳以上) VIRULENCE 2016, VOL. 7, NO. 3, 341–352

34.

エントリーになりやすい 部位と原因菌を知っておく (実はフォーカスあるのに ⾒つけられていない可能性があるため)

35.

⾼齢者は発熱しにくい VIRULENCE 2016, VOL. 7, NO. 3, 341–352

36.

⾼齢者は意識障害をきたしやすい VIRULENCE 2016, VOL. 7, NO. 3, 341–352

37.

VIRULENCE 2016, VOL. 7, NO. 3, 341–352

40.

⾼齢者の菌⾎症のエントリー • 尿路:9〜59%(市中の場合、40%に尿カテあり) • 呼吸器:9〜28% • 腹部:1〜20%(胆道系を含めるかどうかで変わる) • Primary bacteremia:3〜36% • カテーテル関連:1〜10% - 院内:20% - ICU患者:13〜19% VIRULENCE 2016, VOL. 7, NO. 3, 341–352

41.

⾼齢者の菌⾎症の原因菌 • グラム陰性菌がグラム陽性菌よりも多い • グラム陰性菌は⾼齢者のBSIの40〜60% • 市中感染のみの研究では最⼤70% • ⾼齢患者はグラム陰性菌に汚染されるリスクが⾼い ⽼⼈ホーム⼊居、⼊院、呼吸器疾患、機能低下などは すべてグラム陰性菌コロニー形成の危険因⼦ VIRULENCE 2016, VOL. 7, NO. 3, 341–352

42.

⾼齢者の菌⾎症の原因菌 • ⼤腸菌:40%(市中BSI) • ⻩⾊ブドウ球菌:30%(院内BSI) • クレブシエラ:3-10% • 緑膿菌:1-9%(市中では少ない) • アシネトバクター:1-2% • 腸球菌:3-10% • 嫌気性菌:2-5% • 複数菌:5-15% • 真菌:0-3% VIRULENCE 2016, VOL. 7, NO. 3, 341–352

43.

80歳以上の菌⾎症の研究 原因不明が多い 尿路が⼀番多い . Retamar et al. / International Journal of Infectious Diseases 26 (2014) 83–87

44.

Primary bacteremiaの予後:良くない . Retamar et al. / International Journal of Infectious Diseases 26 (2014) 83–87

45.

疫学以外でどうやって 菌を想定するか

47.

TBで抗結核薬 (クラビット含む) 使⽤中の⾼齢男性 尿カテ留置中で施設⼊所中 悪寒戦慄、⾷思不振で来院 認知症あり、病歴・診察ではフォーカス不明 どうせ、尿路でしょ 尿路といったら GNRでしょ!

51.

糖尿病と⾼⾎圧の肥満男性 毎⽇、納⾖⾷べてます

52.

30歳 男性 主訴:寒気、発熱 排便時に出⾎あり その後から悪寒戦慄 ⾼⾎圧:CCB 糖尿病:無治療 ROS:何もなし focusはっきりしない

53.

⾎培:2/2でGPR陽性 (好気ボトル)

56.

⾎培:Bacillus subtilis

57.

腸穿孔に起因する 納⾖菌による菌⾎症 ⽇本では、市中⾎流感染症の原因菌として 最も多いのはグラム陰性⼤腸菌(25.4%) グラム陽性桿菌はまれ(2.7%) 枯草菌はグラム陽性で棒状の芽胞を形成する細菌 ヒトの消化管内に⼀時的に存在する 検体中に枯草菌が存在することはコンタミが多いが、 ⽇本ではまれに菌⾎症の症例が報告されている 今回報告した患者は納⾖を頻繁に⾷べていた Emerging Infectious Diseases • www.cdc.gov/eid • Vol. 28, No. 8, August 2022

59.

嫌気性菌の特徴 ・培養に時間がかかる、そもそも培養されにくい ・他の菌と⼀緒に培養されることが多い

60.

Take home message ü感染のフォーカスは5+1を探す üPrimary bacteremia(0.5)という概念を知る üPrimary bacteremiaと診断するためには、診察しっかり⾏う üPrimary bacteremiaを起こしやすい菌を想定し治療に繋げる

61.

リウマチで ⽣物製剤使⽤中の⾼齢男性

62.

症例 80歳 男性 主訴:震え 現病歴:来院当⽇、朝⾷後に全⾝がガタガタ震えた 1時間くらい持続した後、嘔吐あり 昼前に前医受診 BP140/65,P 100, SpO2 97%, T 36.4 震えの精査⽬的に救急外来を受診 ROS:嘔吐と悪寒戦慄のみ 他は何もない

63.

症例 80歳 男性 主訴:震え 既存:⾼⾎圧、糖尿病、前⽴腺肥⼤症、関節リウマチ 既往:MTX肺炎 内服:アムロジピン、メトグルコ250mg2T、 ユリーフ、オレンシア ⽣活:ADLフル、妻と⼆⼈暮らし、ペットなし

64.

症例 80歳 男性 主訴:震え バイタル:BP133/79,P 104, SpO2 94%, T 38.2, RR 16 ⾒た⽬ お元気そう 直腸診含めて診察では熱源不明 ⾎液検査:WBC 14000(NET 93%),CRP 0.3, 肝胆道系酵素上昇なし 膿尿・細菌尿なし 肺炎球菌・レジオネラ抗原陰性 コロナ/インフル 陰性 CT focus不明

65.

①患者背景 ADLフルの80歳男性 (1)免疫状態: ⽣物製剤使⽤中 DM(6.4) 癌の既往なし ⼝や⽪膚のバリア破綻なし (2)曝露:なし (3)余⼒:あり

66.

②感染臓器・部位 PS:5+1を探す SS:頭の先からつま先まで じっくり診察 →PSでもSSでも ⾎液、尿、単純CTでも focus不明 Primary bacteremia?

67.

③原因微⽣物 ・Primary bacteremiaだとして、 原因微⽣物は? ・過去の⾎培、尿培はなし ・治療はどうしますか? ・ディスカッション してみてください

68.

結局、GPC,GNR狙いでCTRXで開始 • 翌⽇、⾎培2/2で陽性 • 好気、嫌気ボトル全て陽性 1セット⽬: Psuedomonas aeruginosa、Bacteroides fragilis 2セット⽬:Psuedomonas aeruginosa、Morganella morganii これはPolymicrobial Bacteremia (複数菌菌⾎症)

69.

⼤腸菌のリザーバー:消化管 ⼤腸菌はA、B1、B2、Dに分類 A群(常在菌) B2群(病原菌) 特にExPEC:腸管外病原性⼤腸菌 ExPECには 尿路性病原性⼤腸菌(UPEC)と 敗⾎症関連⼤腸菌(SEPEC)がある 菌は尿管を上⾏して腎実質に達し、 腎尿細管上⽪や⽑細⾎管内⽪を 通過して⾎流に⼊る Clin Microbiol Rev 34:e00234-20. https://doi.org/10.1128/CMR .00234-20.

70.

クレブシエラの リザーバーは消化管 莢膜の産⽣により 宿主の免疫から逃避 過剰な莢膜産⽣が Hypervirulent(HV) K.pneumoniaeの特徴 補体の沈着を阻⽌ 感染部位:尿路、胆道、肺炎、 菌⾎症(腸由来) Clin Microbiol Rev 34:e00234-20. https://doi.org/10.1128/CMR .00234-20.

71.

緑膿菌のリザーバー: ヒトではない 湿った環境(⽔回り) 市中の菌⾎症のfocusは 不明なことが多い 感染部位:肺炎、 ⽪膚・軟部組織 T3SS(ExoU,ExoS,ExoT) 外毒素が感染成⽴に重要 Clin Microbiol Rev 34:e00234-20. https://doi.org/10.1128/CMR .00234-20.

72.

菌⾎症に⾄るまで:侵⼊→播種→⽣存

73.

菌⾎症に⾄るまで:侵⼊ 細菌は最初のコロニー形成部位または感染部位に侵⼊し、 カプセル産⽣や外毒素の分泌の機構を⽤いて 宿主の免疫応答を回避する 初期感染部位の特異性は菌種によって異なり、 特定の菌種は特定の部位での侵⼊に適応している

74.

菌⾎症に⾄るまで:播種 侵⼊後、細菌は宿主の上⽪障壁を貫通して⾎液中に侵⼊ 播種にはadhesinや外毒素(緑膿菌)、上⽪細胞における 特異的経路の活性化(肺炎桿菌のHIF-1a)などの因⼦が必要

75.

菌⾎症に⾄るまで:⽣存 ⾎液中に⼊った菌は代謝の柔軟性によって 新しい環境を⽣き延び、カプセル産⽣によって免疫クリアランスを回避 代謝の多様性を制御する遺伝⼦の存在が重要

76.

嫌気性菌菌⾎症 • 嫌気性菌菌⾎症の割合は、⾎液培養陽性例の 0.5~13% • 嫌気性菌はすべて の粘膜表⾯に存在し、腫瘍性疾患における化学療法、 複雑な外科⼿術により解剖学的バリアの破壊が菌⾎症の要因 • 嫌 気性菌菌⾎症は予後にも影響し,不適切な抗菌薬使 ⽤での死亡率が⾼くなる • 嫌気性菌は消化管粘膜の常在菌叢であることを反映し、 菌⾎症の場合は複数菌菌⾎症となりやすい • 嫌気性菌菌⾎症の侵⼊⾨⼾は腹 腔内(47%),⽪膚軟部組織(21%),⼝腔・咽頭(9%)

78.

Polymicrobial Bacteremiaの10-17%は エントリー不明

79.

Polymicrobial Bacteremia:複数菌菌⾎症 〜⽇本からの報告〜 医学検査 Vol.63 No.4 2014