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リファクタリングはいつやる?スライド事例に学ぶ各チームの軌跡

「リファクタリングって意味あるの?」「いつやればいいの?」そんな疑問を持つエンジニアは少なくありません。今回は、合計12万View以上閲覧された人気スライドの知見をもとに、リファクタリングの基礎から実践的なテクニックまでをご紹介します。

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目次

リファクタリングって何?デバッグや最適化との違いを理解しよう

リファクタリング(refactoring)とは、プログラムの外部的な動作を保ちながら、内部の構造を整理・改善する作業です。簡単に言えば、「コードの中身を良くする」ための技術といえます。

リファクタリングの定義と目的

「リファクタリングとは何ですか?」という質問をよく耳にします。リファクタリングとはシンプルに言えば、複雑になったコードを分解して、より理解しやすい形に組み立て直す作業を指します。

リファクタリングの主な目的は以下の3つです:

  • コードの可読性を高める
  • 保守性を向上させる
  • 拡張性を確保する

しかし、リファクタリングにも工数はかかります。開発目標やスケジュール管理の中で、どのようにしてリファクタリングの時間を捻出すべきでしょうか。リファクタリングの基礎から実例までを学んでいきましょう。

デバッグ・最適化との違い

「リファクタリングとデバッグの違いは何ですか?」これもよくある質問です。デバッグはプログラムの不具合を修正する作業で、動作そのものを正しい状態に戻すことが目的です。一方、リファクタリングは正しく動作しているコードをより良い形に整理する作業です。

最適化との違いも重要です。最適化は処理速度やメモリ使用量といったパフォーマンスの向上が目的です。対してリファクタリングは、まずコードの理解のしやすさを重視します。

たとえばどんなことをするの?

例えば、Javaで書かれた長大なメソッドがあるとします。このメソッドは正しく動作していますが、200行以上あって理解が難しい状態です。これを機能ごとに小さなメソッドに分割し、適切な名前を付けることで、コードの意図が明確になります。これがリファクタリングの典型的な例です。

リファクタリングは、まるで部屋の整理整頓のようなものです。物を捨てるわけではなく、使いやすく整理することで、必要なものがすぐに見つかるようになります。同じように、コードを整理することで、機能追加や修正が容易になり、チーム全体の開発効率が向上するのです。

ちなみに、リファクタリングに関しては名著がありますので、こちらもぜひじっくりと学んでみるのによいでしょう。リファクタリングができていない現場ではテストコードもあまりかけていない場合もあり、そういったケースへの対処も書かれています。

「リファクタリングは意味ない」は本当?効果と必要性を考える

「動いているコードを変更するなんて、余計なリスクを生むだけ」「リファクタリングに時間をかけるくらいなら、新機能の開発に注力すべき」——こんな声を聞いたことはありませんか?エンジニアがリファクタリングの必要性を感じていても、チームとしてなかなかリファクタリングを実施できないという声は多いようです。

放置されたコードがもたらす”負債”

一見、動作しているコードに手を加えることは無駄に思えるかもしれません。しかし、リファクタリングをせずに放置されたコードには、時間とともに様々な問題が蓄積されていきます。

例えば、似たような処理が至る所で重複し、1箇所の修正が他の箇所への影響を予測しづらくなります。また、複雑に絡み合った処理など、新しいメンバーの学習コストを大幅に引き上げてしまいます。

リファクタリングがもたらす具体的な効果

適切なタイミングでリファクタリングを行うことで、以下のような効果が期待できます:

  • バグ修正時間の短縮
  • 新機能追加のしやすさ
  • チームの開発速度の維持
  • 技術的な負債の軽減

コストと効果のバランス

「完璧な」コードを目指すあまり、際限のないリファクタリングに陥ってしまうのも問題です。ビジネス価値とのバランスを考えながら、必要な範囲で着実に改善を進めることが大切です。

実際の開発現場では、新機能の追加や不具合修正のついでに、関連する箇所を少しずつ改善していく「ついでリファクタリング」も効果的な手法として知られています。

長期的な視点での判断

リファクタリングの効果は、短期的には目に見えにくいものです。しかし、度重なる機能追加やチームメンバーの入れ替わりを経験するプロジェクトほど、きれいに保たれたコードベースの価値は高まっていきます。

コードの品質は、プロダクトの品質に直結します。リファクタリングは、将来の開発効率と保守性を担保するための重要な投資なのです。

リファクタリングのタイミング:この3つの兆候を見逃すな

コードの品質が徐々に低下していく様子は、まるでゆでガエルのようです。気づいた時には手遅れ…なんてことにならないよう、リファクタリングが必要なタイミングをしっかり見極めましょう。

コードの重複が目立ち始めたとき

「このロジック、どこかで見たことがある…」そんな既視感を覚えることはありませんか?似たような処理が複数箇所に散らばっているのは、リファクタリングの必要性を示す重要なサインです。

いまどきのプログラミング言語では、共通処理を適切なクラスやメソッドに切り出すことで、コードの再利用性が高まり、修正時のミスも防げます。最近では「凝集度」「結合度」などコードの品質を判断する概念も登場していますので、チームで学ぶことで同じ認識を共有できるようになるでしょう。

メソッドや関数が肥大化したとき

画面いっぱいにスクロールが必要なほど長いメソッド。一つの関数が複数の責務を抱え込んでいませんか?メソッドが20行を超えてきたら、機能の分割を検討するタイミングかもしれません。

小さな関数に分割することで、テストがしやすくなり、他の開発者が読んでも理解しやすいコードになります。

命名が曖昧で意図が分かりにくくなったとき

data1やtmp、resultといった抽象的な変数名や、getDataのような具体性に欠けるメソッド名が増えてきたら要注意です。コードを読んだ人が「何をする処理なのか」すぐに理解できる命名を心がけましょう。

また、プロダクトの時間がたつにつれ、もともと想定していたデータ以外も扱うようになり名前と内容が一致しなくなることも往々にしておきます。

その他の見逃せない兆候

以下のような状況も、リファクタリングの良いタイミングです:

  • バグ修正に予想以上に時間がかかるようになった
  • 新機能の追加場所を特定するのに苦労する
  • テストコードの作成が難しい
  • コードレビューで指摘事項が増えてきた

これらの兆候は、一朝一夕に発生するものではありません。日々のコードレビューや開発作業の中で、チーム全体で気を配ることが大切です。放置すればするほど改善コストは増大していきます。

複数の問題が出てくると、どうしてもエンジニアとしては「じっくり時間をとって全体的にリファクタリングしたい」と考えるかもしれません。しかし大規模改修はかなりリスクが高く、ビジネス上の投資判断も難しくなります。

後半でも出てきますが、新機能開発の合間を縫って少しずつ改善を進める「こまめなリファクタリング」は、大規模な改修を防ぐ効果的な予防策となります。

チームの軌跡に学ぶ!成功するリファクタリングの進め方

リファクタリングの必要性は分かったものの、具体的にどう進めればいいのか。人気の高い技術スライドから、実際の成功例を見ていきましょう。

古いjQueryコードを段階的に改善する

ぺんた / 菅原 政行さんによる「10年もののjQueryフロントエンドを良くしていくための道筋」は、多くの開発者が直面するレガシーコードの改善手法を示しています。

特に印象的なのは、一気に全てを変えるのではなく、命名規則の統一から始めて、ESLintの導入、Webpackの導入、そしてTypeScriptへの移行と、着実にステップを踏んで改善を進めている点です。

インフラ面でのスマートな改善事例

Yuki Andoさんの「10年モノのサービスのインフラを漸進的に改善する、頑張りすぎないクラウドネイティブ」からは、無理のない改善の進め方が学べます。

古いEC2インスタンスの更新や、バッチ処理の見直しなど、優先順位をつけながら段階的に改善を進めることで、チームの負担を抑えつつ着実な成果を上げています。

品質向上とチーム全体での取り組み

Tommy109さんの「その品質は最初から間違っている!」では、リファクタリングを含む品質向上活動をチーム全体で進める重要性を説いています。

開発の初期段階からテスト駆動開発(TDD)を導入し、ペアプログラミングでコードレビューを行うなど、チーム全体で品質を作り込む具体例が示されています。

3つの事例から見える成功のポイント

これらの事例に共通するのは、以下の要素です:

  • 一度に大きく変えようとせず、段階的に改善を進める
  • 自動化ツールを効果的に活用し、人的ミスを減らす
  • チームでの対話を重視し、改善のためのプラクティスを学ぶ

さらに興味深いのは、いずれの事例でも「完璧を求めすぎない」という姿勢です。できるところから着実に、そして継続的に改善を進めることで、最終的に大きな成果につながっています。

では、どこからリファクタリングを始めていけばいい?

ここまでで解説してきたように、大掛かりなリファクタリングを始める前に、まずは身近なところから改善を始めてみましょう。小さな成功体験を積み重ねることが、大きな変化への第一歩となります。

特に、チーム開発では大掛かりなリファクタリングを行うと、並走している機能開発や別のモジュールへの影響があり、リファクタリングを行ってから本番にアップするまでに大変な調整が必要になってしまう場合もあります。小さく、既存の開発のついでやどうしても目についたところだけ、こまめにリファクタリングを行うことが重要です。

分かりやすい命名から始めよう

最も取り組みやすいのが、変数やメソッドの命名の見直しです。たとえば data1 や temp といった曖昧な名前を、実際の用途が分かる具体的な名前に変更するだけでも、コードの可読性は大きく向上します。

JavaやTypeScriptでは、命名規則(コーディング規約)に従って統一的な名前をつけることで、他のメンバーとの協業もスムーズになります。

長いメソッドを小分けにする

画面数十行におよぶ長大なメソッドは、役割ごとに小さなメソッドに分割しましょう。一つのメソッドは一つの責務を持つ、というシンプルな原則に従うだけで、コードは見違えるように整理されます。

とくに運用が長くなっているプロダクトでは「本当にこの値が飛んでくるのか?本当にこの処理は通るのか?」がわからなくなってくるため、実際にコードを修正するよりも流れやデータを整理することで「疑心暗鬼になるコードを減らす」ことに時間を費やすことが重要です。

重複コードを見つけて整理する

似たような処理が複数の場所で繰り返されていないでしょうか。共通のメソッドやユーティリティクラスとして切り出すことで、コードの重複を減らせます。変更が必要になった時の手間も大幅に削減できます。ほとんど同じだが若干違う処理をどうするかといった疑問は、「凝集」の考え方も参考にしてみましょう。

こちらのWEB+DB PRESSにはいまどきのリファクタリングに関する実践知識が収録されているのでオススメです。

チームを巻き込むコツ

個人の取り組みだけでなく、コードレビューの時間を活用して改善案を共有したり、朝会で5分程度、リファクタリングのコツを話し合ったりするのも効果的です。

最初は小さな改善でも、チームで共有し、その効果を実感できれば、より大きな改善への理解も得やすくなります。

自動化ツールを味方につける

手作業での改善には限界があります。ESLintやBiomeといったツールを導入すれば、問題のある箇所を自動的に検出できます。IDEの提供するリファクタリング機能も、安全な修正作業の強い味方です。

ただし、ツールに頼りすぎるのも禁物です。コードの意図や文脈を理解した上で、必要な改善を判断することが大切です。

リファクタリングを成功に導く、具体的なステップと推奨ツール

ツールの力を借りて効率的にリファクタリングを進めましょう。段階的な導入と、各ツールの特徴を理解することで、確実にコードの品質を高められます。

コードフォーマッターで始める一貫性のある整形

コードの一貫性を保つ第一歩として、例えばフロントではESLintやBiomeの導入がおすすめです。インデントの揃え方やセミコロンの扱いといった基本的なルールから、未使用変数の検出、グローバル変数の制限まで、幅広いチェックができます。同様にサーバ側もフォーマッタが各種存在しており、VSCodeなどのIDEのプラグインとして提供されているため、チームで同じものを導入するとよいでしょう。

これらのフォーマッタの多くは設定ファイルでフォーマットのスタイルや厳しさを指定できるので、ファイルをチーム内で共有し、CIツールと連携させることで、自動的にコードの品質を維持できるようになります。

自動テストで安全性を確保

jestやJUnitなどのテストフレームワークを使って、既存の機能を壊していないことを確認しながらリファクタリングを進めます。DOM操作を含むフロントエンド開発では、jsdomを組み合わせることで、より実践的なテストが可能になります。

ですが、そもそものテストコードがない場合もあせる必要はありません。テストコードはあればいいというものではなく、継続的にメンテナンスが必要になるからです。重要なポイントで人間が必ずチェックしたいけれども時間がかかるといった部分から重点的に整備し、作った後もメンテナンスしてく前提で書いていくことが重要です。

型システムによる堅牢性の向上

JavaScriptのコードベースでは、TypeScriptの導入が大きな転換点となります。型による制約は、リファクタリング時の安全性を高め、IDEのサポートも充実します。既存のコードへの段階的な導入も可能です。その他の言語でもIDEの支援によって型安全性を高める工夫を取り込めるツールがあります。

便利なリファクタリング支援ツール

VS CodeやIntelliJ IDEAなどの開発環境には、変数名の一括変更や、メソッドの抽出といった便利な機能が備わっています。これらを活用することで、手作業による修正ミスを防ぎながら、効率的に改善を進められます。

ただし、ツールはあくまでも補助に過ぎません。コードの意図を理解し、改善の方向性を見定めた上で、適切なツールを選択することが大切です。段階的な導入と、チーム内での知見の共有を心がけましょう。

みなさまのプロダクトが長期的に安定して開発できることを応援しています!

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