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December 15, 22
スライド概要
第63回日本肺癌学会学術集会のワークショップで講演したスライドです。主に肺癌領域のオンコロジストを対象とした内容となっています。
Palliative care physician, Oncologist, Clinical trialist, former Medical expert for the development of MK-3475
早期からの緩和ケアとは 結局何なのか? Yusuke Takagi. Dec 2022
あれから12年 Temel JS et al. N Engl J Med. 2010;363:733-42 転移性肺癌患者 151 例を対象としたRCT 試験登録後3週以内、以降は⽉1回以上 全⽣存期間 早期緩和ケア群 標準治療群 緩和ケアチームとの⾯接が予約される HR 1.70 (95%CI 1.14-2.54), p=.02 早期緩和ケア群 標準治療群 患者/家族/主治医のいずれかが必要と 判断した時点から介⼊開始 • 登録後12週時点での QOL (FACT-L), 気分障害 (HADS, PHQ-9) が有意に改善 • 終末期の積極的治療が有意に減少 中央値 11.6ヶ⽉ 8.9ヶ⽉
早期からの緩和ケアで何が得られるか Haun MW, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017;6:CD011129. • 全⽣存期間は必ずしも延⻑しない HR=0.85 (95%CI: 0.56-1.28) n QOLと症状コントロールは改善する n 医療コストは減少する
早期緩和ケアに対する誤解 ✕ 主治医による、診断時からの細やかな⽀持・緩和療法? 専⾨的緩和ケアでカバーする領域 • 緩和困難な⾝体症状 • 栄養管理 • 社会⼼理的問題 • 療養に必要な情報の提供 • ⼼理療法、精神療法 • 意思決定⽀援 • コミュニケーション • 家族に対するケア • リハビリ • 医療従事者に対するケア 緩和ケアを主治医で完結しようとするのは無謀です
緩和ケアの各要素は相互補完的 Hoerger M, et al. J Clin Oncol. 2018;36:1096-1102. ⾯談のテーマ 得られた効果 コーピング QOL 向上 治療の意思決定 終末期の化学療法減少 ACP 緩和ケア病棟の利⽤増加 • 単⼀の専⾨職を主体としたモデルでは、期待された効果が得られないことが多い1,2 • 国際的なデルファイ調査では、学際的チームは医師、看護師、⼼理社会的職種を 最低限含むべきであるというコンセンサスが得られた3 1. Tattersall MHN, et al. J Palliat Care Med. 2014;4:100170, 2. McCorkle R, et al. J Palliat Med. 2015;18:962-969. 3. Hui D, et al. Ann Oncol. 2015;26:1953-1959.
いつ専⾨的緩和ケアを⼊れるべきか? • 予後という観点では 12ヶ⽉以内を適切とする専⾨家が最も多かった Hui D, et al. Lancet Oncol. 2016;17:e552-e559. 早すぎ 適切 遅すぎ
いつ専⾨的緩和ケアを⼊れるべきか? • 治療は 1-2 レジメンが PD となった時点、PSは 2 以上が多かった Hui D, et al. Lancet Oncol. 2016;17:e552-e559. PD 適切 PD 遅すぎ 早すぎ 適切 遅すぎ
そうは⾔うけれど・・・ • たとえ専⾨的緩和ケアへの紹介を 「予後1年以内 or 2レジメン後のPD or PS≧2」に絞った ところで、専⾨的緩和ケアを提供する側のリソースが 追いつかないのは明らか (特に外来診療において) • それならば、主治医 (オンコロジスト) が患者の症状に応じて 専⾨的緩和ケアへの紹介時期を判断する⽅法が良いのか?
主治医が患者の症状に応じて専⾨的緩和ケアに 紹介するモデルでは、患者のニーズが過⼩評価される1,2 主治医側の要因 患者側の要因 n 短い診療時間 n 聞きたいことをうまく⾔い出せない n 対処が難しい症状について触れない (倦怠感, 脱⽑, 不安 etc…) n しばしば患者は、⽬先の治療に集中 することで主治医と「結託」し、 楽観的な空想を持つことを望む3 n 患者の⽣活に対する関⼼が低い 患者が主治医に訴える以外の症状把握チャネルが必要 1. Chang VT, et al. Cancer. 2000;88:1175-1183, 2. Wentlandt K, et al. J Clin Oncol. 2012;30:4380-4386. 3. The AM, et al. BMJ. 2000;321(7273):1376-81.
症状スクリーニング • エドモントン症状評価システム (ESAS)1 などのツールが⽤いられることが多い • 最近では IPOS (Integrated Palliative care Outcome Scale)2 の利⽤も 広がりつつある • がん患者で頻度の⾼い症状が網羅されて おり、症状の追加も可能 1. Yokomichi N, et al. J Pain Symptom Manage. 2015;50(5):718-23. 2. Sakurai H, et al. Jpn J Clin Oncol. 2019;49(3):257-262.
肺癌治療医に求められる役割 主担当科外来 緩和ケア外来・相談⽀援センター 症状スクリーニング 緩和困難な症状の対応 ⼼理的サポート 症状への基本的な対応 社会的問題への⽀援 病状に関する正確な情報提供 家族ケア
将来的な解決策 • 必ずしも「医師・看護師」が「対⾯で」⾏わなくても良い過程がある ü 症状スクリーニング ü セルフケア指導 ü 制度に関する情報提供 など • がん患者の遺族を対象としたアンケート調査1では、 ⼼理的問題やコミュニケーションに関する家族ケアとして 3-4 割が電話やメールなどによる⾮対⾯の⼿段を許容していた 1. ⾼⽊ら,第27回⽇本緩和医療学会学術⼤会 P30-10, 2022
まとめ • がん治療薬がバイオマーカーのスクリーニングによって 適切に選択されるように、専⾨的緩和ケアのニーズも 危機的な徴候が表れる前にスクリーニングされるべき • オンコロジストの役割に占める多職種連携の要素は 年々⼤きくなってきており、がん治療の周辺領域に関する 広い知識と開かれたコミュニケーションが求められる