20210806 SIBO

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September 12, 22

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1.

2021/08/06 カンファレンス 低カリウム血症

2.

85歳女性 【主訴】 腹痛 【現病歴】 ● 1か月ほど前から白色便が出現。 ● 上腹部痛、発熱で救急搬送。CTで胃壁の浮腫、十二指腸下行脚の壁肥厚、胸 腹水を認め消化器内科で精査中。著明な低K血症、軽度腎機能低下を認め腎 臓内科コンサルト。

3.

【既往歴】 胆摘後、逆流性食道炎、骨粗鬆症、シェーグレン症候群 【家族歴】長女が子宮体がん 【アレルギー】なし 【生活歴】喫煙:never smoker、飲酒:なし 【薬剤】 タケキャブ20mg2T、ビビアント20mg1T、エディロール0.75μg1C、プレタール 100mg2T、リリカ25mg2T、モサプリドクエン酸5mg3T、ミヤBM3T

4.

【身体所見】 37.0℃ BP105/64 mmHg PR93/分 95%(カニュラ1L) RR18/分 全身状態:安定 頭頸部:口腔内乾燥 胸部:肺雑音なし、呼吸音左右差なし。心雑音なし、Ⅲ、Ⅳ音聴取されず。 四肢:両側下腿に圧痕性浮腫あり 鎖骨上窩、滑車上、腋窩リンパ節に明らかな腫脹や圧痛なし

8.

胸腹部CT ● 両側胸水、心拡大 ● 胃粘膜の浮腫 ● 腹水著明

9.

上部消化管内視鏡(入院時) ● 慢性活動性胃炎(萎縮性胃炎) ● 十二指腸狭窄疑い(ピンホール様狭窄)

10.

プロブレムリスト #1. 下痢 #2. 低K血症 #3. 低アルブミン血症 #4. 全身浮腫 #5. 十二指腸狭窄 #6. シェーグレン症候群の既往 What’s your diagnosis?

11.
[beta]
低カリウム血症の診断アルゴリズム
a 利尿剤の用量の割に重症の低Kの背景にはアルドステロン
の過剰があるかも
b 代謝性アルカローシスや尿pH7以上も嘔吐を示唆
c 代謝性アシドーシスの存在はRTAと他のほとんどの原因と
の鑑別に有用である
尿K/Cr>22 mEq/g→腎性喪失を示唆
尿Na/Cl<0.7、尿Cl>152)→下剤濫用?
尿Na/Cl>1.6、尿Cl<15→嘔吐?
尿Na/Cl≒1→利尿剤使用、RTA?
低Mg→薬剤性(PPIなど)、尿細管障害?

1) JAMA. 2021;325(12):1216-1217
2) Clin J Am Soc Nephrol 14: 306–316, February, 2019

12.

尿Na/Cl>1.6は嘔吐、<0.7は下剤濫用 ● ● 神経性食思不振症(嘔吐)の診断のために、尿Na/Cl>1.6は 感度95.2%、特異度98.7% 下剤使用に対し、尿Na/Cl<0.7は感度86.5%、特異度100% The American Journal of Medicine (2017) 130, 846-855

13.

尿Clによる鑑別 Clin J Am Soc Nephrol 14: 306–316, February, 2019

14.

慢性下痢の鑑別 Paradoxical diarrhea(奇異性下痢) SIBO Arasaradnam RP, et al. Gut 2018;67:1380–1399

15.

蛋白漏出性胃腸症 診断と治療 108(1): 99-104, 2020

16.

蛋白漏出性胃腸症の原因 診断と治療 108(1): 99-104, 2020

17.

蛋白漏出性胃腸症の診断アルゴリズム ● ● ● ● セリアック病疑い→抗トランスグルタミ ナーゼIgA抗体、十二指腸生検、HLA DQ2 IBD疑い→便中カルプロテクチン Whipple病(Tropheryma whipplei感染) →生検でマクロファージ内のPAS陽性物 質の沈着、抗HTLV-1抗体陽性 α1アンチトリプシンクリアランス=便量 ×便中α1アンチトリプシン濃度÷血中α1 アンチトリプシン濃度(3日間蓄便) 1) Curr Opin Gastroenterol. 2020 May;36(3):238-244 2) 診断と治療 108(1): 99-104, 2020

18.

蛋白漏出性胃腸症の症状と検査所見 小腸や大腸の基礎疾患がある患者では下痢、脂肪便、腹痛、腹 部膨満感、鼓腸など消化器症状を認めることがある Protein-losing gastroenteropathy - UpToDate

19.

膠原病に伴う蛋白漏出性胃腸症では高コレステロール血症 腸管リンパ管拡張症ではリンパ管の破綻により低蛋白・低ガンマグロブリン血 症・低コレステロール血症を引き起こす 膠原病では毛細血管の透過性の亢進を認めるが、C3を主体とした免疫グロブリン の血管壁への沈着によりアルブミン主体の漏出が起こりネフローゼ症候群と同様 の機序で消化管における脂質吸収異常、肝臓におけるアルブミン合成の亢進に伴 う脂質合成の亢進などが原因となっている可能性がある。 高コレステロール血症の蛋白漏出性胃腸症は膠原病関連かも 日本消化器病学会雑誌 101(12): 1314-1319, 2004

20.

小腸内細菌異常増殖(SIBO) 小腸内に細菌が過剰に増殖したことにより消化器症状を来す症候群 本来小腸で完全に吸収されるはずの栄養素の発酵により、過剰なガスの産生や腹部膨 満感が生じる 十二指腸や空腸の吸引液の細菌培養で細菌数≧103(CFU/mL)でSIBOと診断される 小腸内での病的な発酵のため吸収不良や腸管の透過性の変化、炎症、免疫の賦活化に より嘔気、腹部膨満、鼓腸、腹部不快感、腹部疝痛、腹痛、下痢、便秘などの症状を 来す 重症例では、脂肪便、体重減少、貧血、脂溶性ビタミン欠乏、小腸粘膜の炎症などを 認めることがある 呼気水素試験や呼気メタン試験は比較的安価で侵襲もなく簡単にできる(自宅ででき るキットもある) Am J Gastroenterol 2020;115:165–178

21.

検査所見など 脂肪便 脂溶性ビタミン(A、D、E)の欠乏 B12、1、3も欠乏 逆にKや葉酸は細菌の合成により増加する 蛋白吸収不良(可逆性の蛋白漏出性胃腸症を起こし得る)→蛋白低下 毒素産生→D乳酸アシドーシス→神経症状(錯乱、昏睡、構音障害、痙攣、運動失 調など) Small intestinal bacterial overgrowth: Clinical manifestations and diagnosis - UpToDate

22.

呼気試験 呼気試験の前4週間は抗菌薬の使用を避け、少なくとも1週間前からは消化管運動刺激薬や緩下薬 は避けることが推奨されている。試験前日は発酵食品(複合炭水化物など)は避け、8-12時間前 からは絶食とする。呼気試験中は喫煙は避け、身体活動は最小限とすべきである。 75gブドウ糖か10gラクツロースを服用し、1杯の水(〜250 mL)を摂取する。 呼気中の水素とメタンを測定する。 90分後の水素濃度がベースラインから20 ppm以上上昇していれば陽性。 どのタイミングであれメタン濃度の10 ppm以上の上昇はメタン生成菌の定着を示唆する。 しかし、メタン生成菌は古細菌(Archaea)に属し、小腸だけでなく大腸でも増殖するため、メタン 生成菌の異常増殖の際にはSIBOではなくintestinal methanogen overgrowth (IMO)と呼ぶことを提 案する。 Am J Gastroenterol 2020;115:165–178

23.

IMO 測れない・・・ SIBO Am J Gastroenterol 2020;115:165–178

24.

呼気試験 水素が20以上上昇 →SIBO メタンが10以上上昇 →IMO Am J Gastroenterol 2020;115:165–178

25.

呼気試験 小腸吸引液培養と比べ、呼気試験はラクツロースでは感度31-68%、特異度44100%、グルコースでは感度29-93%、特異度30-86%だった。 十二指腸吸引培養と比べたとき、糖尿病患者のフルクトースでは感度48%、特異 度71%と非糖尿病患者のグルコースによる試験と同等の成績だった(糖尿病患者 ではブドウ糖は高血糖や腸管運動の低下を来たし試験結果に影響する可能性があ る)。 過去に研究はないが、糖尿病患者では非吸収性の炭水化物であるラクツロースの ほうが好ましいかもしれない。 Am J Gastroenterol 2020;115:165–178

26.

小腸吸引液の細菌培養 SIBO診断のgold standardと考えられている。 上部消化管内視鏡で、十二指腸深部に挿入する。 内視鏡挿入時は口腔内や胃内の吸引は最小限に留め、十二指腸以外からの分泌液のコンタミネーション を予防する。 複数のサイドホールのある2mmカテーテルなどで十二指腸液を3-5 mL程度吸引する。 術者と助手はカテーテル回収時や検体採取時は滅菌手袋を使用する。 採取後は速やかに細菌検査室へ提出し好気と嫌気培養を依頼する。 細菌数≧103 CFU/mLでSIBOと診断する。 小腸吸引液培養と呼気試験の一致率はせいぜい65%程度で一つの検査では確定できないこともある。 Am J Gastroenterol 2020;115:165–178

27.

Clinical and Translational Gastroenterology 2019;10:e00078

28.

SIBOの小腸吸引培養の特徴 ● Escherichia/Shigella、Aeromonas、Pseudomonasの増加 ● Acinetobacter、Citrobacter、Microvirgulaの減少 Am J Gastroenterol 2020;115:165–178

29.

小腸内細菌増殖と関連する病態 機械的要因 小腸腫瘍、腸捻転、腸重積、術後(胃空腸吻合後のblind loopや迷走神経損 傷など) 全身性疾患 糖尿病、強皮症、アミロイドーシス、パーキンソン病、慢性腎不全、甲状 腺機能低下症 消化管運動障害 IBS、偽閉塞、visceral myopathy、ミトコンドリア病 薬剤 オピオイド、止痢薬、抗コリン薬 吸収不良 膵機能不全、肝硬変(胆汁酸の成分変化)、その他吸収不良の状態 免疫関連 HIV、免疫不全状態、IgA欠損、セリアック病、クローン病 その他 加齢、小腸憩室、特発性細菌性腹膜炎、慢性膵炎、嚢胞性線維症、IBS、線 維筋痛症、アルコール依存症、多発性硬化症 Am J Gastroenterol 2020;115:165–178

30.

PPIがリスク? PPIがSIBOのリスクと考えられてきたが、、 最近の大規模研究ではPPIによるSIBOの発症や小腸内細菌叢の変化は見られなか った、という報告もあり、確たる根拠は乏しい。 Am J Gastroenterol 2020;115:165–178

31.

メタン産生とIMO 呼気試験でのメタン陽性は便秘と関連し、呼気中のメタン濃度は便秘の程度と相 関している。 メタンは細菌ではなく古細菌によって産生される。 ヒトでは、メタンの過剰産生はヒトの腸管で支配的なメタン生成菌である Methanobrevibacter smithiiが原因となっているようである。 この場合、SIMOよりIMOが呼称として適切 Am J Gastroenterol 2020;115:165–178

32.

ガイドラインでは… ● 呼気試験は感度も特異度も微妙 ● SIBOに対して最も感度が良い小腸の吸引液培養を推奨 ● それができないのであれば、ためにし抗菌薬治療してみる Arasaradnam RP, et al. Gut 2018;67:1380–1399

33.

SIBOの治療 治療期間は文献により様々だが、7-10日 としているものが多い。 再発は3か月で12.6%、6か月で27.5%、9 か月で43.7% Am J Gastroenterol 2020;115:165–178

34.

リファキシミンは14日、それ以外は10日 間投与(著者レジメン) IMOの治療はリファキシミン550mg1日3回 +ネオマイシン500mg1日2回を14日間(著 者レジメン) 腎機能により減量考慮 小児の確立されたレジメンはない。記載の 小児レジメンは特に但し書きがなければ6 歳以上のもの。 Small intestinal bacterial overgrowth: Management - UpToDate

35.

再発予防は? まずはSIBOの原因の除去(オピオイド、ベンゾ、PPIなど原因となり得る薬剤中 止や手術が原因であれば再手術の検討など) SIBOに対する抗菌薬の予防投与は年に4回以上再発する患者や再発のリスク因子 (短腸症候群や十二指腸憩室など)がある場合に検討する 予防投与は月に5-10日投与や隔週投与など周期的投与とし、抗菌薬は耐性菌の出 現を防ぐため毎月〜半年毎などローテーションさせる。 Small intestinal bacterial overgrowth: Management - UpToDate

36.

現実的には… オーグメンチン、サワシリンなどを治療量で7-10日内服 外来毎(毎月など)に治療量の半量程度で3種類程度の抗菌薬をローテーション (フラジール、バクタ、シプロフロキサシン、オーグメンチンなど)

37.

食事療法 発酵産物を減らすことが目標 →低繊維 アルコールの糖質やその他のスクラロースなど発酵する甘味料を避ける 低FODMAP食! Am J Gastroenterol 2020;115:165–178

38.

低FODMAP(フォドマップ)食 4種類の発酵性の糖質を含む食品を控える。 F: 発酵性(Fermentable) O: オリゴ糖(Oligosaccharides) D: 二糖類(Disaccharides) M: 単糖類(Monosaccharides) A: And P: ポリオール(Polyols)

39.

大正製薬(https://taisho-kenko.com/disease/detail/145)

40.

プロバイオティクスは? エビデンス乏しい。 呼気試験で水素濃度が低下したという報告もあるが、メタン濃度が逆に増えたと いう報告もある。 プロバイオティクスがSIBOやアシドーシスの原因となり、ガス産生や腹部膨満感 が増えるかもしれないとも言われている。 Am J Gastroenterol 2020;115:165–178

41.

便移植は? エビデンス乏しい。 多剤耐性菌を移植してしまうという懸念がある。 CD腸炎患者に対する便移植後に重度の便秘を来たし、呼気メタン試験陽性となっ たという報告もある。 Am J Gastroenterol 2020;115:165–178

42.

最終診断 膵頭部癌十二指腸浸潤 →十二指腸狭窄 →小腸内細菌異常増殖症(SIBO)

43.

Take home message ● 全身浮腫を伴う慢性下痢は蛋白漏出性胃腸症、SIBOも鑑別に