20210706 脾臓原発悪性リンパ腫

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September 12, 22

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各ページのテキスト
1.

カンファレンス 2021/07/06 倦怠感

2.

症例 64歳 男性 【主訴】倦怠感 【現病歴】 ● 16年前に⾎液透析導⼊(糖尿病)。 ● 前年10⽉頃(8か⽉前)から3程度のCRP上昇を認めていた。 ● 同年1-2⽉(4-5か⽉前)はCRP正常化していたが、3⽉頃(3か⽉前)再び上昇を認め、 ⾎⼩板減少も認めるようになった。 ● 同年4⽉(2か⽉前)、CRP2〜7台、⾎⼩板11〜13万/μLで推移。 ● 同年6⽉(2週間ほど前)からは普段は数キロしていたウォーキングもできなくなった。 階段歩⾏時に体全体が重たい感じを⾃覚し、何をするにも億劫になった。 ● 6⽉1⽇(15⽇前)、倦怠感、微熱でかかりつけを受診した。CRP上昇(13 mg/dL)、 ⾎⼩板減少(2.4万/μL)、⾎圧低下を認めた。 ● 6⽉15⽇(前⽇)、当院関連病院を紹介受診した。胸部CTで両側すりガラス陰影を認め、 6⽉16⽇(当⽇)同⽇精査加療⽬的に当院紹介⼊院となった。 >>ROS

3.

Review of systems ROS(+)︓発熱、倦怠感 ROS(-)︓戦慄、頭痛、咳嗽、喀痰、⿐汁、咽頭痛、腹痛、嘔気・嘔 吐、下痢、排尿時痛、頻尿、残尿感、寝汗、体重減少 >>既往歴・⽣活歴

4.

既往歴・生活歴 【既往歴】 糖尿病、高血圧、脊柱管狭窄症術後、末期腎不全(原疾患:糖尿病性腎 症疑い) 【アレルギー】なし 【生活歴】 喫煙 :never smoker 飲酒:ウィスキー1本を時々 【家族歴】祖母:胃癌で死去 【ADL】自立 >>薬

5.

薬剤 かかりつけ処方 リマプロストアルファデクス(PGE1)5μg3錠分3、メチコバール250μg3錠分 3、ランソプラゾール15mg1錠分1、バイアスピリン100mg1錠分1、クロチ アゼパム5mg1錠分1、チラーヂン50μg1錠分1、ルネスタ2mg1錠分1、ゾピ クロン10mg1錠分1、ホスレノール500mg3錠分3、フォスブロック250mg6 錠分3、リオナ250mg6錠分3、センノシド12mg1錠分1頓用 >>⾝体所⾒

6.

身体所見 身長 162 cm 、体重 61.5kg(BMI 23.4) バイタルサイン: 体温 36.1 ℃、血圧 105/72 mmHg、脈拍 70 bpm regular、呼吸数 20/min、SpO2 99%(室内気) 全身状態:倦怠感あり 頭頸部:眼瞼結膜蒼白なし、眼球結膜黄染なし。眼瞼結膜や口腔内に点状出血認めず 咽頭発赤なし、扁桃腫大・白苔付着なし。頸部リンパ節腫脹・圧痛なし 胸部:肺雑音なし、呼吸音左右差なし 収縮期雑音あり、Ⅲ・Ⅳ音聴取されず 腹部:平坦、軟 圧痛なし。肝叩打痛なし。Murphy徴候陰性。 腸蠕動音亢進減弱なし 背部:CVA叩打痛なし。脊柱叩打痛なし 四肢:両側下腿浮腫なし。両肩に軽度圧痛あり、明らかな熱感・腫脹・発赤は認めず。 肘・手・足・膝関節に腫脹・圧痛なし。両側下腿に点状出血斑あり Osler結節なし、Janeway病変なし、splinter hemorrhageなし >>検査所⾒

7.

>>胸部レントゲン

8.

胸部レントゲン >>胸腹部CT

9.

胸腹部CT(前医) 脾腫を認める >>プロブレムリスト

10.

プロブレムリスト #1. 発熱、倦怠感 #2. 炎症反応高値 #3. 肝胆道系酵素上昇 #4. 血小板減少 #5. 下腿の点状出血 #6. 脾腫 What is your diagnosis?

11.

Day1 経胸壁心エコー:明らかな疣贅認めず

12.

Day2 腹部エコー:脾臓5.9x7.5cm、脾臓内部に境界不明瞭な類円形の 低エコー、内部に線状エコーも認める

13.

Day3 造影CTで脾梗塞

14.

Day3 骨髄穿刺、骨髄生検施行 →骨髄塗抹では明らかな芽球増殖や血球の形態異常などは認めず

15.

Day5 骨髄塗抹標本 ・軽度低形成 ・血球貪食細胞の増加(血球貪食症候群)

16.

Day5 血管内リンパ腫も考慮しランダム皮膚生検施行 →血管周囲主体に中等度のリンパ球様細胞の浸潤を認 めるが、明らかな悪性リンパ腫とするほどの異型性は 認めず(Day8)

17.

Day5 骨髄フローサイトメトリー 有意な所見得られず

18.

Day5

19.

Day6 発熱、ショックバイタル! →脾機能低下による重症感染症も考慮しメロペン、ヒドロコルチゾン 200mg/日開始 →翌日には解熱、循環動態も安定(結局血培も陰性)

20.

Day7 脾臓原発悪性リンパ腫疑いで血液内科コンサルト →脾臓摘出術(Day8)、術中経食道心エコーで疣贅認めず →フローサイトメトリーなどでリンパ腫を示唆する所見が得 られ次第転院加療の方針

21.

Day9 脾臓フローサイトメトリー 有意な所見得られず

22.

Day9 骨髄生検およびclot標本 正形成骨髄、G/E比およそ3:1 骨髄巨核球は正常範囲に認められる。顆粒球系には各成熟段階の細胞がみられる。 標本上は、芽球の異型増生巣、肉芽腫、腫瘍など明らかな所見は認めない

23.

Day16 骨髄Gバンドで複数の染色体異常

24.

Day17 脾臓のスタンプ標本でリンパ腫疑い →B細胞性リンパ腫疑い(Day21)

25.

Day19 骨髄遺伝子再構成

26.

Day19 脾臓Gバンドで複数の染色体異常

27.

Day23 発熱、ショックバイタルとなりHPSとしてmPSL500mg3日間投与 →解熱し循環動態も安定化

28.

Day26 脾臓遺伝子再構成

29.

Day29 悪性リンパ腫治療のため転院 →後日病理でT-cell/histiocyte rich large B-cell lymphoma of spleenと確定診断

30.

経過まとめ 2020/06/16(day01) 経胸壁心エコー:明らかな疣贅(-) 2020/06/17(day02) 腹部エコー:脾臓内部に境界不明瞭な類円形の低エコー 2020/06/18(day03) 胸腹部造影CT:脾梗塞、骨髄穿刺/生検施行→FCM:モノクローナリティ(-)、血球貪食 2020/06/20(day05) ランダム皮膚生検→有意な所見は得られず 2020/06/22(day07) 脾臓原発悪性リンパ腫疑いで血液内科コンサルト 2020/06/23(day08) 脾臓摘出術、術中経食道心エコー:疣贅(-) 2020/07/02(day17) 病理で脾臓原発悪性リンパ腫疑い 2020/07/08(day23) 発熱、ショックバイタルとなりHPSとしてmPSL500mg3日間投与 2020/07/14(day29) 悪性リンパ腫治療のため転院 2020/07/16 T-cell/histiocyte rich large B-cell lymphoma of spleenと確定診断

31.

脾腫の原因 血液疾患(49%) リンパ増殖性疾患:リンパ腫(30%)、慢性リンパ性白血病(15%)、急性リンパ性白血病、多中心 性キャッスルマン病 骨髄増殖性疾患:慢性骨髄性白血病(21%)、骨髄線維症(11%)、MDS(4%)、急性骨髄性白血病、 全身性肥満細胞症 赤血球系疾患:サラセミア、鎌状赤血球症* 、球状赤血球症/楕円赤血球症、髄外造血、真性赤血 球増加症 肝疾患(23%) 慢性肝不全、門脈血栓症、バット・キアリ(Budd-Chiari)症候群 感染症(13%) ウイルス感染:伝染性単核球症、サイトメガロウイルス感染症 細菌感染:亜急性感染性心内膜炎、脾膿瘍、腸チフス(Salmonella typhi)、ブルセラ症、ペリオー シス(Bartonella spp.)、結核、非結核性抗酸菌症(Mycobacterium avium intracellulare) その他:マラリア、内蔵リーシュマニア症(黒熱病)、住血吸虫症、ヒストプラズマ症 自己免疫疾患 Felty症候群** 、SLE、自己免疫性溶血性貧血、シェーグレン症候群 浸潤性疾患 代謝性疾患:ゴーシェ病、ムコ多糖症、ニーマン・ピック(Niemann-Pick)病 その他:アミロイドーシス、サルコイドーシス、脾転移*** *小児の場合。成人では自己梗塞のため低形成となる。 **RA患者で。 ***特にメラノーマ。 Br J Hosp Med (Lond). 2011 Nov;72(11):M166-9

32.

巨大な脾腫の原因 今回は正中線は超えてません… 脾臓600g ● 巨大な脾腫(>1000g、または脾臓が正中線を超えるとき)は鑑別が限られる ● 慢性骨髄性白血病(最多)、慢性リンパ性白血病、骨髄線維症、真性赤血球 増加症、サラセミア、内蔵リーシュマニア症(黒熱病)、マラリア、住血吸 虫症、ゴーシェ病、ニーマン・ピック(Niemann-Pick)病 Br J Hosp Med (Lond). 2011 Nov;72(11):M166-9

33.

脾腫の脾摘の適応 ● ● ● ● ● ● 破裂 治療抵抗性のITP 重症か治療抵抗性の脾機能亢進症 巨大な脾腫による強い不快感 腫瘍減量手術 Tumour debulking (リンパ腫、転移) 診断のため(他の検査による診断が難しい場合) Br J Hosp Med (Lond). 2011 Nov;72(11):M166-9

34.

フェリチン>3000の鑑別 今回はフェリチン852… 血球貪食症候群 デング熱、レジオネラ、ウェス トナイルウイルス、HIV、結核、 播種性ヒストプラズマ症 成人スティル病、抗リン脂質抗 体症候群、Rosai-Dorfman病 急性肝炎/肝不全、アルコール ヘモクロマトーシス 輸血 腎不全/透析 悪性腫瘍 異常ヘモグロビン症 臓器移植、骨髄移植 Intern Med J . 2015 Aug;45(8):828-33

35.

フェリチン>3000、10000の内訳 Intern Med J . 2015 Aug;45(8):828-33

36.

血球貪食症候群 寿命を全うし死ぬべき運命にある血液細胞は、網内系のマクロファージ (組織球) に認識され、速やかに貪食・処理される。 網内系のマクロ ファージは, 貪食のプロフェッショナルであり、病原体や死細胞 の貪食・排除を行い、生態系の恒常性の保持に関わっている。 免疫制御機構の破綻により、マクロファージが自己の血球を無秩序に貪食してし まうことがある。 この病気を血球貪食症候群という。 島根医学 36(1): 9-17, 2016

37.

血球貪食症候群の分類 島根医学 36(1): 9-17, 2016

38.

自己免疫関連血球貪食症候群(MAS)の基礎疾患 島根医学 36(1): 9-17, 2016

39.

血球貪食症候群の診断 10万/μL 1000/μL Curr Opin Immunol. 2017 Dec;49:20-26

40.

血球貪食症候群の治療 一次性HPS:デキサメタゾン、エトポシド、シクロスポリンの併用 二次性HPS:基礎疾患に対する治療の強化(ステロイドなど) 島根医学 36(1): 9-17, 2016

41.

リンパ腫の診断にsIL2Rはあてになる?

42.

sIL-2R(悪性リンパ腫VS非血液疾患) 今回はsIL-2R 18126、LDH 396 ● 血清sIL-2Rは悪性リンパ腫群(median 1330U/ml, range: 197~84200)で非血 液疾患群(median 827 U/ml, range: 106~18100)と比べて有意に高かった (p<0.001) ● 非血液疾患群で最も高かったのは劇症肝炎の18100 ● LDHは悪性リンパ腫群(median 216 IU/L, range: 34~7325)で非血液疾患群 (median 200 IU/L, range: 94~3220)と比べて有意に高かった(p<0.001) ● WBCも悪性リンパ腫群(median 5790/μl, range: 1600~109150)で非血液疾 患群(median 6440/μl, range: 20~29500)と比べて有意に低かった(p<0.001) Mol Cell Neurosci. 2011 May;47(1):19-27

43.

リンパ腫でも脾臓がらみは特に高い? Mol Cell Neurosci. 2011 May;47(1):19-27

44.

Mol Cell Neurosci. 2011 May;47(1):19-27

45.

Mol Clin Oncol. 2019 Nov;11(5):474-482

46.

sIL-2R>1946、年齢>46、LDH>173は悪性リンパ腫のリス ク Mol Clin Oncol. 2019 Nov;11(5):474-482

47.

悪性リンパ腫関連血球貪食症候群とsIL-2R/FRN LAHS 良性疾患関連HPS 悪性腫瘍関連血球貪食症候群(LAHS) vs その他のHPS(良性疾患関連HPS) sIL-2R>5000かつsIL-2R/フェリチン>2.0 は96%がLAHS 今回はsIL-2R 18126、 sIL-2R/フェリチン 21 Ann Hematol. 2012 Jan;91(1):63-71

48.

sIL-2Rまとめ ● sIL-2R>2000は悪性リンパ腫の可能性が高い ● sIL-2R>5000は悪性リンパ腫を強く示唆 ● 悪性度の高いリンパ腫の中ではT/NK細胞リンパ腫のほうが、B細 胞リンパ腫より有意に高値となる ● 数値はリンパ腫の悪性度と相関する ● よくある偽陽性は脾臓の進行した非リンパ腫の固形癌、著明な炎 症症状を伴う薬剤アレルギー、結核、他の感染症 ● 偽陰性は低悪性度のリンパ腫 ● sIL-2R>1946、年齢>46、LDH>173は悪性リンパ腫のリスク ● HPS疑いでsIL-2R>5000かつsIL-2R/フェリチン>2.0は悪性リンパ 腫関連を示唆 Mol Clin Oncol. 2019 Nov;11(5):474-482 Ann Hematol. 2012 Jan;91(1):63-71

49.

脾臓原発悪性リンパ腫 ● ● ● ● ● ● ● ● ● 非常にまれな疾患(リンパ腫全体の2%未満、非ホジキンリンパ腫の1%未満) 厳密な定義では病変が脾臓や脾門リンパ節に限局、脾摘後6ヶ月再発を認めないリンパ腫に限られ る(splenic lymphomaの緩い定義では、有意なリンパ節腫脹がなく脾臓に病変を認めるもので、骨髄 や肝臓への浸潤はあってもよい) 症状は体重減少、脱力、発熱、脾腫による腹痛、腹部不快感などの非特異的なもの 血球減少、ESR上昇 まれだが脾膿瘍を来すこともある StageⅠは脾臓に限局、StageⅡは脾門リンパ節まで浸潤、StageⅢは脾臓以外へのリンパ節転移や 肝転移を認める 末梢血スメアでは有毛細胞(hairy cells)、前リンパ球、絨毛リンパ球(villous lymphocytes)、好塩基 性絨毛リンパ球などの腫瘍性のリンパ球様細胞を認める場合は、リンパ系腫瘍の可能性がある 有効な診断的治療は脾臓摘出術 生検や穿刺吸引細胞診(FNAC)は出血のリスクから従来は推奨されていなかたが、最近ではルー チンの診断検査となり得る World J Clin Cases. 2016 Dec 16; 4(12): 385–389

50.

有毛細胞 前リンパ球 絨毛リンパ球 有毛細胞白血病 B細胞性前リンパ球性白血病 脾辺縁帯リンパ腫 形質細胞様リンパ球 顆粒リンパ球 buttock cell2) お尻細胞? リンパ形質細胞性リンパ腫 末梢血塗抹 T細胞大顆粒リンパ球性白血病 濾胞性リンパ腫 1) World J Clin Cases. 2016 Dec 16; 4(12): 385–389 2) Blood. 2011 Mar 3;117(9):2585-95

51.

リンパ系腫瘍疑いの脾臓検体の組織診断(日本) ● リンパ系腫瘍疑いで脾摘や生検をした日本の検体を 解析 ● 62.5%がリンパ系腫瘍 ● 9.7%が他の腫瘍(Littoral cell tumor、骨髄増殖性疾 患、血管腫、組織球肉腫、骨髄系腫瘍、ランゲルハ ンス細胞組織球症、濾胞樹状細胞腫瘍、肝細胞癌) ● 27.7%が非腫瘍(類上皮肉芽腫、炎症性偽腫瘍、キ ャッスルマン病、壊死、アミロイドーシス、伝染性 単核球症、脾嚢胞) ● 15.2%が正常組織だった Pathol Int. 2012 Sep;62(9):577-82

52.

リンパ系腫瘍の内訳 ● B細胞リンパ腫(91.3%) DLBCL(43.8%)、脾辺縁帯リンパ腫(26.6%)、濾胞性リンパ腫(10.4%)、脾B細 胞リンパ腫/白血病・分類不能型(5.7%) ● NK/T細胞リンパ腫(7.0%) 末梢性T細胞リンパ腫(50%)、未分化大細胞リンパ腫(ALK+)(25%)、肝脾T細 胞リンパ腫(12.5%)、成人T細胞白血病・リンパ腫(12.5%) ● ホジキンリンパ腫(1.7%) Pathol Int. 2012 Sep;62(9):577-82

53.

リンパ腫では非腫瘍と比べLDHは有意に高い Pathol Int. 2012 Sep;62(9):577-82

54.

非ホジキンリンパ腫の特徴 Pathol Int. 2012 Sep;62(9):577-82

55.

脾臓原発悪性リンパ腫(B細胞リンパ腫)の免疫表現型 CD20は全例陽性 Pathol Int. 2012 Sep;62(9):577-82

56.

脾臓原発悪性リンパ腫(NK/T細胞リンパ腫)の免疫表現型 CD3は7/8例で陽性 Pathol Int. 2012 Sep;62(9):577-82

57.

日本における脾臓原発悪性リンパ腫 ● DLBCLが最多、次にSMZLが多い ● DLBCLは高齢、LDHは比較的高め、脾臓への腫瘍形成が多い ● SMZLは脾腫は認めるが、腫瘍形成しない Pathol Int. 2012 Sep;62(9):577-82

58.

T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫(THRLBCL) ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● DLBCLのまれな亜型(DLBCLの3-4%) 平均年齢57歳(9-92歳) 発症頻度は0.23/100万人 黒人・男性(rate ratio: 032, P = 000001)で多い 他のDLBCLよりstageⅣで診断されることが多い(50% vs. 33%, P < 00001) 病理学的には豊富な反応性のTリンパ球と組織球の中に10%未満の悪性B細胞が存在する T細胞が豊富なため、T細胞リンパ腫や結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫 (NLPHL)と 誤って診断されることも多い 脾臓が関与する場合は白脾髄に多巣性か微小結節性に病変を認める。肝臓が関与する場合は、 リンパ腫細胞は門脈路に限局する。 治療はDLBCLと同様、R-CHOP 5年生存率は46-75% 病理組織学的診断能力の向上や早期治療のためかここ数年予後は生存率は改善、DLBCLと同 等となっている(3年生存率76% vs 46-64%) Br J Haematol. 2019 Apr;185(1):140-142. doi: 10.1111/bjh.15391 National Journal of Laboratory Medicine. 2017 Apr, Vol-6(2): PC10-PC13

59.

THRLBCLとNLPHLの鑑別点 National Journal of Laboratory Medicine. 2017 Apr, Vol-6(2): PC10-PC13

60.

脾臓のTHRLBCL ● ● ● ● ● ● ● ● かなりまれ(Pubmedで引っかかるのも数件程度) 全例、これまでの報告では脾腫、貧血、B症状を認める リンパ節腫脹は少ない(あっても脾門リンパ節に限局) リンパ腫は白脾髄に微小結節性に認める CD3(+)のT細胞やCD68(+)の組織球を背景に大細胞の散在を認める 大型の腫瘍細胞はB細胞系のマーカーであるCD20とbcl-6を発現している EMA、bcl-2、CD30は陽性となることもある。CD10やEBVは陰性。 骨髄所見では濾胞性リンパ腫、B細胞性慢性リンパ性白血病、マントル細胞リン パ腫、古典的ホジキンリンパ腫、T細胞リンパ腫、結節性リンパ球優位型ホジキ ンリンパ腫、反応性の変化を示唆することもあり、正確な診断は脾摘なしでは非 常に困難 ● 脾辺縁帯リンパ腫や慢性リンパ性白血病から悪性転化する可能性もある(後者は リヒター症候群) Ups J Med Sci. 2010 Aug;115(3):217-9

61.

THRLBCLとその他B細胞腫瘍の脾臓の病理組織学的特徴 Am J Surg Pathol. 2003 Jul;27(7):903-11

62.

最終診断 ● 脾臓原発悪性リンパ腫:T細胞/組織球豊富型大細胞型B細 胞リンパ腫(THRLBCL) ● 悪性リンパ腫関連血球貪食症候群

63.

Take home message ● 骨髄生検、フローサイトメトリーで有意な所見が得られず悪性リンパ腫の確 定診断に苦慮した一例を経験した ● リンパ節腫脹のない血球減少や脾腫では血管内リンパ腫や脾臓原発悪性リン パ腫も鑑別となる ● sIL-2Rの絶対値やsIL-2R/フェリチンもリンパ腫、LAHSの診断補助となる ● フローサイトメトリーで有意な所見が得られなくてもリンパ腫は否定できな い ● まれながらTHRLBCLというDLBCLの亜型もあることを銘記すべきである ● あとがなければ化学療法前にパルス+抗菌薬もためらわない!

64.

おまけ

65.

脾臓摘出後ワクチンのスケジュール(成人) ・脾臓摘出後重症感染症(OPSI)予防のためワクチン接種が必要 ・予定された脾臓摘出術であれば、手術の約10-12週前にはワクチン接種を開始する(脾臓摘出術 の最低14日前には推奨される肺炎球菌ワクチン接種を終えたいため)。 ・脾臓摘出術後化学療法や他の免疫抑制療法を受ける予定であれば、治療終了から約3か月後にワ クチン接種を再開する。 ・緊急の脾臓摘出術を受けた患者では、脾臓摘出14日後にワクチン接種を開始するべきである。 もし脾臓摘出後14日以内にワクチンを接種した場合はそのワクチンは初回接種8週後に再接種した ほうがよい(ワクチンに対する適切な抗体反応は脾摘後約14日で発現する)。 Prevention of infection in patients with impaired splenic function – UpToDate

66.

各種ワクチン 肺炎球菌ワクチン: PCV13(プレベナー)接種し、8週間以上あけてPPSV23(ニューモバックス)を接種。 PPSV23(ニューモバックス)は5-7年毎に繰り返し接種。 Hibワクチン(ActHIB):未接種であれば単回接種。再接種は不要。 髄膜炎菌ワクチン(Menactra):1回接種後、8週以上あけて再接種。その後は5年毎に接種。肺 炎球菌ワクチンの効果を減弱させる懸念があるためMenactraはPCV13(プレベナー)接種後4週 間はあける。 インフルエンザワクチン:毎年接種する。 ※Hibワクチン、髄膜炎菌ワクチン(2万円程度)は保険適応がないため接種については患者と相 談して決める。 Prevention of infection in patients with impaired splenic function – UpToDate

67.

現実的には… プレベナー接種(緊急なら脾臓摘出後14日以降) →4週後にメナクトラ1回目接種 →4週後にニューモバックス接種(以降5年毎にニューモバックス) →4週後にメナクトラ2回目接種(以降5年毎にメナクトラ)

68.

極論で語るフローサイトメトリー(FCM) 日内会誌 100:1807~1816,2011

69.

サイトグラム 日内会誌 100:1807~1816,2011

70.

FCMのオーダーは? 白血病疑い→CD45ゲーティング(CD45は芽球で発現が弱い) リンパ腫疑い→7AADゲーティング(死細胞を振り分け) 骨髄腫疑い→CD38ゲーティング(形質細胞をターゲット) *ゲーティング:解析対象とする細胞集団をサイトグラム上で指定 日内会誌 100:1807~1816,2011

71.

ゲーティング 日内会誌 100:1807~1816,2011

72.

CDナンバー B細胞:CD19、20、κ or λ、22(細胞質内)、79a(細胞質内) T細胞:CD2、3、5、7、TCRαβ、4 or 8 NK細胞:CD2、7、16、56、57 骨髄球(好中球):CD13、33、MPO 単球:CD13、14、33、CD4弱陽性 赤血球:GP-A(CD235a)

73.

CD45ゲーティング 芽球領域の細胞は増えてないか?→増えていれば白血病を疑う CD45陰性細胞に芽球はないか?→あれば急性リンパ性白血病(ALL)を疑う 異常な芽球(CD7、56、19陽性)はないか? T、NK、B細胞系のマーカー 日内会誌 100:1807~1816,2011

74.

芽球多い 89歳男性 CLL疑い 末梢血検体

76.

74歳男性 芽球増加を伴うMDS(MDS-EB-2) 骨髄検体(骨髄芽球19.4%) 芽球>20% 白血病?? 3個を超える染色体異常

77.

7AADゲーティング B細胞系(CD3多い)?T細胞系(CD19多い)? κ>λ(3倍以上)or λ>κ(2倍以上)→B細胞性腫瘍疑い 汎T細胞抗原(CD3、5、7)で落ちてるのはないか?(正常でもCD7-のことはある) CD3+T細胞≒CD4+T細胞+CD8+T細胞? T細胞(CD3)+B細胞(CD19)+NK細胞(CD2-CD3)≒100% CD4+/CD5+/CD10+→血管免疫芽球性T細胞性リンパ腫(AITL)疑い CD4+/CD25+→成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)疑い→HTLV-Ⅰ抗体チェック モノクローナリティはあるか?(B細胞系でκ/λ) 異常な細胞の出現や増加はないか?(T細胞系で汎T細胞抗原の欠落や異常な組み合わせがないか) 日内会誌 100:1807~1816,2011

78.

FCMによる非ホジキンリンパ腫診断アルゴリズム Indian Pediatr. 2018 Jan 15;55(1):55-62

79.

73歳男性 DLBCL リンパ節検体 CD5-、CD10+ κ多い

81.

CD38ゲーティング ● 正常形質細胞との違い1:CD19陰性(95%)、CD56陽性 (75%)、 CD117陽性(30%)、CD20陽性(30%) ● MPC-1陰性は未熟型骨髄腫細胞 ● MPC-1、CD45、CD49eすべて陽性なら成熟型骨髄腫細胞 ● その他は中間型骨髄腫細胞 ● 未熟型は予後不良3 1) 日内会誌 100:1807~1816,2011 2) Int J Hematol. 2006 Jan;83(1):39-43

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74歳女性 多発性骨髄腫 骨髄検体 正常形質細胞 未熟型

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FCMは参考程度に… B細胞性リンパ腫の早期診断や白血病の鑑別には有用 T細胞性リンパ腫はFCMでは診断が困難なことが多い ホジキンリンパ腫は検出困難(ほとんどが反応性に増加したリンパ球) 日内会誌 100:1807~1816,2011

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極論で語る遺伝子再構成 Bリンパ球は免疫グロブリン関連遺伝子において、Tリンパ球はT細胞受容体遺伝 子において、遺伝子再構成を行っている リンパ系腫瘍では元々の遺伝子配列の部分(germlineバンド)以外に幾つかのバン ドが検出される B細胞性疑い→免疫グロブリン重鎖JH(IgH-JH) T細胞性疑い→TCRβ鎖Cβ1 日本臨牀 71(増刊号4): 747-749, 2013

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極論で語る染色体検査(Gバンド分染法、FISH法) ● ● ● ● ● とりあえずGバンド(だが1〜2週間かかる) FISH法はあとで追加できる(数日と早いが染色体異常1個だけ) Gバンドから3か月は検体保存されている FISH法は末梢血も可(細胞分裂期でなくてよい) 末梢血好中球FISH、t(9;22)だけで慢性骨髄性白血病の確定診断が できる