20171110 イソニアジドによる薬剤性躁状態

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September 12, 22

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1.

カンファレンス 2017/11/10 イソニアジドによる 薬剤性躁状態

2.

症例 80歳 ⼥性 【主訴】興奮 【現病歴】 – 1年前、関節リウマチを発症し治療開始。 – 5か⽉前、器質化肺炎をきたしステロイドパルス、⼈⼯呼吸器・気管切 開となっていた。ステロイド治療により呼吸器離脱し外来フォローと なった。プレドニゾロンは45mgより漸減していった。 – 3週間前 興奮状態となった。ステロイド精神病を疑いプレドニゾロン 17.5mgから15mgに減量しタクロリムス1.5mgを中⽌、クエチアピン 25mgを導⼊したが改善しなかった。 >>病歴の続き

3.

病歴の続き – 10⽇前、プレドニゾロンを10mgまで減量し、薬もきちんと飲めて いないにも関わらず興奮状態は治まらなかった。 – 3⽇前、興奮状態のため内服も困難となった。家族をひっぱたく、 つねるなど暴⼒もみられるようになっていた。同じ話を何度も繰 り返すこともあった。 – 前⽇、朝から興奮状態で夜も眠らなかった。 – 当⽇、3-4⽇は⾷事も⽔分もとれていない状況であり、興奮状態も 治まらないため救急受診。 >>エピソード

4.

Review of systems – ROS(+)︓興奮、多弁、不眠、⾷思不振、易怒性、発熱 – ROS(-)︓悪寒戦慄、咳嗽、喀痰、⿐汁、咽頭痛、頭痛、嘔気・ 嘔吐、腹痛、下痢、関節痛、希死念慮、幻覚 >>既往歴・⽣活歴

5.

既往歴・⽣活歴 【既往歴】 関節リウマチ リウマチ関連間質性肺炎 ⾼⾎圧症 冠攣縮性狭⼼症 【アレルギー】なし 【⽣活歴】夫、息⼦夫婦と同居。喫煙 :なし、飲酒:なし 【病前性格】礼節のあるしっかり者 【家族歴】姉︓双極性障害 【ADL】⾃⽴ >>薬剤

6.

薬剤 プレドニゾロン 10mg アスピリン 100mg ST合剤(スルファメトキサゾール 200 mg、トリメトプリム 40 mg) アルファカルシドール 0.25μg ジルチアゼム 100mg クエチアピン 100mg イソニアジド 200mg ピリドキシン塩酸塩 30mg リセドロン酸ナトリウム 75mg(⽉1回) >>⾝体所⾒

7.

⾝体所⾒ バイタルサイン: 体温 37.2℃、⾎圧 189/118mmHg、脈拍 115bpm regular、呼吸数 16/min、SpO2 96%(室内気) 体重 34kg GCS: E4V4M5 全⾝状態︓興奮、多弁。 頭頚部︓眼瞼結膜蒼⽩なし、眼球結膜⻩染なし、頚静脈怒張 なし。 胸部︓⼼⾳・呼吸⾳(静かにするように指⽰しても⼀⽅的に しゃべり続けるため評価できない) 腹部︓平坦、軟。圧痛なし。 四肢︓下腿浮腫なし。関節腫脹・疼痛なし。 神経学的所⾒︓明らかな異常所⾒なし。 >>検査所⾒①

8.

検査所⾒① ⽣化学 TP ALB AST ALT ALP γGTP LDH CK UN Cre Na K Cl Ca IP 7.1 4.1 22 18 183 20 415 53 20.8 0.68 141 3.6 101 9.3 2.3 g/dL g/dL U/L U/L U/L U/L U/L U/L mg/dL mg/dL mEq/L mEq/L mEq/L mEq/L mEq/L CRP NH3 STS TP抗体 HBs抗原 TSH FT3 FT4 ⾎算 WBC RBC Hb Hct MCV Plt 4.63 38 mg/dl mg/dL 0.0 0.7 3.254 3.22 1.20 COI COI μIU/mL pg/mL ng/dL 13800 3.72 11.5 34.9 93.8 36.5 /μL ×106/μL g/dL % fl ×104/μL 尿定性 pH ⽐重 蛋⽩ 糖 潜⾎ WBC 6.5 1.019 (±) (-) (-) (-) 尿沈渣 ⾚⾎球 ⽩⾎球 細菌 1未満/HPF 5-9/HPF (1+) >>検査所⾒②

9.

検査所⾒② 髄液検査 細胞数 糖 蛋⽩ Cl ⽐重 LDH 単核球 多核球 その他 ADA 1 73 39 122 1.005 31 1 0 0 <2.0 /μL mg/dL mg/dL mEq/L U/L >>頭部MRI

10.

頭部MRI – 画像供覧 >>胸部CT

11.

胸部CT – 画像供覧 >>プロブレムリスト

12.

胸部CT 3か⽉前 ⼊院時

13.

胸部CT 3か⽉前 ⼊院時

14.

画像所⾒ – 頭部MRI︓新規の異常信号域を認めず。 – 胸部MRI︓右中葉、右肺底部の浸潤影は増強、左肺底部の浸潤 影は消退傾向。

15.

プロブレムリスト #1. 躁状態(興奮・多弁) #2. 新規の肺の浸潤影 #3. 関節リウマチの既往 #4. リウマチ関連間質性肺炎の既往 What is your diagnosis? >>鑑別

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鑑別 – 薬剤性 – 橋本脳症 – 感染症 – てんかん発作 – 内因性 >>⼊院後検査

17.

⼊院後検査 抗サイログロブリン抗体 抗TPO抗体 ビタミンB1 ビタミンB12 各種培養 ⾎液培養2セット 尿培養 喀痰培養 髄液培養 20 12 32 ≧1500 IU/mL IU/mL ng/mL pg/mL 陰性 E. Coli 3+ Cit. freundi 3+ 陰性 陰性 >>経過

18.

経過 – Steroid psychosisとして薬剤調整(向精神薬)のため⼊院で経過を みた。薬剤相互作⽤を考慮しジルチアゼムは中⽌。 – ⼊院4⽇⽬、精神症状は変わらず。イソニアジド中⽌、ピリドキ シン塩酸塩 60mgに増量。 – 1週間後、躁状態は改善。⾷事摂取もできるようになり不眠も解 消された。 – ステロイド増量後も精神症状は再燃なく経過した。 >>経過表

19.

経過表 今回の⼊院 RA関連間質性肺炎で⼊院 興奮・多弁 多弁 挿管 PSL 45mg (5⽇) 45mg (1か⽉) 35mg (2週) 30mg (2週) 25mg (2週) 20mg (2週) 17.5mg (1週) 15mg (1週) 60mg 40mg (1週) 50mg (1週) (2⽇) 20mg (2週) 10mg (2週) 40mg m-PSL 1g(3⽇) INH 200mg(5か⽉) RFP 300mg 60mg PN 30mg FK506 1mg 1.5mg 75 100 75 50 25 1.5mg 50 25 QTP 2 DZP 4 2 12.5 2mg SASP1000mg BUC 100mg 1 >>勉強スライド

20.

Antibiotic-induced mania (Antibiomania) temafloxacin sulfamethoxazole and trimethoprim procaine penicillin perfloxacin ofloxacin norfloxacin minocycline metronidazole isoniazid iproniazid gentamicin fusidic acid ethionamide ethambutol erythromycin dapsone cycloserine clarithromycin ciprofloxacin cefalexin ampicillin 1 6 1 2 16 4 1 10 12 7 1 1 2 1 9 2 1 74 24 1 1 0 10 20 30 40 50 NUMBER OF CASES 60 70 80 J Affect Disord. 2017 Sep;219:149-156

21.

Isoniazid psychosis – 抗結核薬の中で興奮を伴う精神症状を呈するものとして、まれ ながらINHが知られている。 – 症状は興奮、不眠、不安、多幸感、精神病症状、意識変容 CNS Drugs. 2010 Aug;24(8):655-67 – ⾃殺企図の報告もある J Bras Pneumol. 2010;36(5):626-640

22.

疫学 – 頻度はまれ(1.9%) – 潜伏期間は数⽇から数か⽉ – 改善までは通常数⽇から数週 CNS Drugs. 2010 Aug;24(8):655-67

23.

機序 – MAO阻害によるカテコラミンやセロトニン濃度上昇 Ann Pharmacother. 1993 Feb;27(2):167-70 – ピリドキシンホスホキナーゼの阻害に伴うピリドキサール5リ ン酸の活性低下(ビタミンB6の機能的低下)によるGABAを含む 神経伝達物質の減少 Indo American Journal of Pharm Research. 2014:4(01):274-277 – 活性酸素による海⾺のNMDA受容体の減少 Mol Cell Biochem. 2005 Sep;277(1-2):131-5

24.

イソニアジド – 結核治療や予防の第⼀選択薬 – ピリジン環とヒドラジン基から構成される – 肝臓で代謝(N-アセチル転移酵素によるアセチル化) – 代謝の速度は⼈(表現型)により様々(rapid or slow acetylator) – 表現型によって抗菌作⽤に差はない – 70-96%は腎で排泄される。少量は便からも排泄。 – 半減期はrapid acetylatorで1時間(0.5-1.6時間)、slow acetylator で2-5時間。 J Bras Pneumol. 2010;36(5):626-640

25.

抗うつ薬の歴史はイソニアジドから始まった Experientia. 1991 Jan 15;47(1):4-8

26.

リスクと治療 – リスク因⼦ 5mg/kg/⽇以上、50歳以上、Slow acetylator、糖尿病、アルコール 依存症、肝機能障害、甲状腺機能亢進症、頭部外傷、MAO阻害 薬の併⽤、精神疾患の既往 Can J Psychiatry. 1988 Oct;33(7):675-6 – 治療 イソニアジドの中⽌ ビタミンB6補充(有効性は不明) CNS Drugs. 2010 Aug;24(8):655-67

27.

Take home message – イソニアジドの副作⽤に精神症状がある – 遅発的に起こることがあるので注意