20210903 悪性症候群

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September 12, 22

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1.

2021/09/03 カンファレンス 意識障害

2.

悪性症候群(NMS) • • • • • • • 抗精神病薬の使用に関連する致死的な神経学的緊急疾患 精神状態の変化、筋強剛、発熱、自律神経障害が特徴(四徴) 死亡率は現在は10-20%(1960年代は76%だった) 発生頻度は抗精神病薬使用者の0.02-3% 若年成人に多いがどの年代でも起こり得る 男性が女性より2倍多い 第1世代抗精神病薬(ハロペリドール、フルフェナジン)で最も多い が、低力価(クロルプロマジン)や第2世代(クロザピン、リスペリ ドン、オランザピン)、制吐薬(メトクロプラミド、プロメタジン、 レボスルピリド)も原因となる Neuroleptic malignant syndrome - UpToDate

3.

悪性症候群の原因薬剤 抗精神病薬と制吐薬 • • • • 通常抗精神病薬開始2週間で発症 単回使用や長年使用している薬剤でも発症し得る 用量には依存しないが、高用量はリスク因子 最近の増量や急速な増量、他の薬剤への切り替え、経静 脈投与もリスク因子 Neuroleptic malignant syndrome - UpToDate

4.

リスク因子 • リチウムや他の向精神薬との併用 • 高力価の抗精神病薬 • デポ剤(持効性注射剤) • 薬物濫用や神経疾患の既往 • 急性の身体疾患(外傷、手術、感染) Neuroleptic malignant syndrome - UpToDate

5.

抗パ薬の中断も原因となる • パーキンソニズムの患者でL-ドパやドパミン作動薬の中断・減 量・変薬をした際にもNMSを来し得る。 • パーキンソニズム患者で感染や手術も誘発因子となる • NMSとは別にneuroleptic malignant-like syndromeやparkinsonism hyperpyrexia syndromeと呼ばれることもある Neuroleptic malignant syndrome - UpToDate

6.

病因 パーキンソニズムの激しい版…? • 原因は不明 • ドパミン受容体遮断が原因ではないかと考えられている • 視床下部でのドパミン受容体遮断が高体温や他の自律神経症状 の原因かもしれない • 黒質線条体ドパミン経路の遮断が筋強剛や振戦などパーキンソ ン病型の症状を引き起こすのかもしれない • 他の理論もある Neuroleptic malignant syndrome - UpToDate

7.

臨床症状 精神状態の変化→筋強剛→高体温→自律神経障害が典型的な経過(70%) 発熱は発症から24時間以上遅れることもある • 精神状態の変化、筋強剛、発熱、自律神経障害(四徴)は典型 的には1-3日かけて出現 • 82%の患者で初発症状は精神状態の変化(昏迷や昏睡状態を伴 う深刻な脳症への進展が典型的) • 全般化した、しばしば激しい筋強剛 • 流涎(りゅうぜん)、構音障害、嚥下障害 • 高体温(38℃以上) • 自律神経の不安定性:頻脈(88%)、血圧の変動や高血圧(6177%)、頻呼吸(73%)不整脈、発汗 Neuroleptic malignant syndrome - UpToDate

8.

検査所見 • CK上昇:典型的には>1000IU/L、>10万となることもある。CKの 程度は重症度と予後と相関する。 • 白血球増多:WBC10000-40000が典型的。左方移動が見られるこ ともある。 • LD、ALP、トランスアミナーゼの軽度上昇はよくある • 電解質異常:低Ca血症、低Mg血症、低Na血症、高Na血症、高K 血症、代謝性アシドーシス • 横紋筋融解症によるミオグロビン尿 • 血清鉄の低下(平均5.71 μmol/L) Neuroleptic malignant syndrome - UpToDate

9.

非典型例 • 軽症や低力価や早期診断例では、四徴が揃わない”不完全型“も ある • 実践的には四徴のうち2つあればNMSの診断も考慮する Neuroleptic malignant syndrome - UpToDate

10.

診断基準 発汗 カットオフは定義されていない… Neuroleptic malignant syndrome - UpToDate

11.

NMS疑いでは他疾患除外を • 頭部画像検査や腰椎穿刺で脳の器質的疾患や感染症を除外する • MRIやCTは典型的には正常 • 重篤な代謝異常があれば、びまん性脳浮腫や悪性高熱症で見ら れるような小脳や基底核の信号異常を認めることもある • 脳脊髄液所見は通常正常だが非特異的な蛋白上昇を認めること もある • NCSE除外のため脳波をとることもある。NMSでは全般性徐波が 見られる。 Neuroleptic malignant syndrome - UpToDate

12.

鑑別診断 • セロトニン症候群(SSRIの使用) シバリング、反射亢進、ミオクローヌス、運動失調はNMSでは通常みられない典型的な 特徴 • 悪性高熱症 まれな遺伝疾患。強力なハロゲン化吸入麻酔薬やサクシニルコリンで発症。熱ストレス への暴露や激しい運動でも誘発される。 • 悪性カタトニア • バクロフェン髄注の中断(GABA減少が原因と考えられている) 筋強剛というより痙縮→治療再開やベンゾジアゼピンが有効) • その他 中枢神経系の感染症(髄膜炎、脳炎)、全身感染症(肺炎、敗血症)、痙攣、急性水頭 症、急性脊髄損傷、熱中症(抗精神病薬は体温調節を障害することで熱中症の増悪因子と なる)、急性ジストニア、破傷風、中枢神経系血管炎、甲状腺中毒症、褐色細胞腫、薬物 中毒(フェンクリジン、エクスタシー、コカイン、アンフェタミン、リチウム)、離脱症 状、自己免疫性脳炎、傍腫瘍性脳炎、急性ポルフィリン症 Neuroleptic malignant syndrome - UpToDate

13.

NMSのMRI画像 • 画像は通常正常だが、T2やFLAIRで白質や小脳の高信号(T1低 信号、DWIで拡散抑制=高信号)を認めることがある。 • 高血圧性脳症に似た所見となることもある。 • 可逆性。 • 機序は高体温による脳組織の直接的な損傷や自律神経障害に よる頭蓋内圧亢進に起因する小脳の虚血が考えられている。 治療6週後 信号異常は消失 T2W(a, b)、FLAIR(c, d)、DWI(e, f) T2、FLAIRで小脳、脳幹、小脳脚、大脳基底核、視床、内包、脳梁膨大部の対称性の高信号 DWIで拡散抑制 Am J Emerg Med. 2015 Aug;33(8):1113.e1-3

14.

機序 • 機序は高体温による脳組織の直接的な損傷や自律神経障害によ る頭蓋内圧亢進に起因する小脳の虚血が考えられている1)。 • 脳の病変は特に小脳に現れやすい →プルキンエ細胞が熱に脆弱と考えれており、小脳は特に熱によ る損傷にさらされやすい2)。 1) Am J Emerg Med. 2015 Aug;33(8):1113.e1-3 2) Heliyon. 2020 Oct 30;6(10):e05374

15.

治療 • 原因薬剤の中止 • ドパミン作動薬の中断が増悪因子であれば、再開すべき • 支持療法 • ダントロレン、ブロモクリプチン、アマンタジン(重症例や改 善ない、増悪傾向の患者で考慮) • 中等症〜重症ではベンゾジアゼピン(ロラゼパムやジアゼパ ム)+ダントロレンで治療開始し、ブロモクリプチンやアマン タジンの追加を検討 Neuroleptic malignant syndrome - UpToDate

16.

薬物療法 • ジアゼパム10mg8時間毎静注 • ダントロレン1-2.5mg/kg静注、Max10mg/kg/日まで繰り返し使用可能(使用数分 以内に効果発現) ※肝毒性のリスクあり、著明な肝機能異常があれば使用を避ける 数日後中止を推奨するものや再発抑制のため10日は継続し漸減を推奨するものが ある。 • ブロモクリプチン(ドパミン作動薬)2.5mg6-8時間毎経鼻胃管より投与 (Max40mg/日) NMS制御後10日間は継続し漸減を推奨 • アマンタジン(ドパミン作動+抗こりん作用)初回100mg経口or胃管より投与。 必要に応じMax200mg12時間毎まで増量(ブロモクリプチンの代替薬) • レボドパ、アポモルフィン、カルバマゼピン、ブプロピオン、ベンゾジアゼピン (ロラゼパムやクロナゼパム)が有効だったという報告もある Neuroleptic malignant syndrome - UpToDate

17.

ダントリウム(日本の添付文書) • 通常、成人にはダントロレンナトリウム水和物として、初回量 40mgを静脈内投与し、症状の改善が認められない場合には、 20mgずつ追加投与する。年齢、症状により適宜増減するが、1 日総投与量は200mgまでとする。通常7日以内の投与とする。 • 通常、1バイアルに日局 注射用水60mLを加え、振り混ぜ、溶液 が澄明になったことを確認の後、使用する。

18.

電気痙攣療法(ECT) • 薬物療法に反応しない場合は考慮 Neuroleptic malignant syndrome - UpToDate

19.

予後 • ほとんどのエピソードは2週間以内に寛解する • 回復までの時間は平均7-11日 • 6か月間、後遺症のカタトニアや運動症状が持続した報告もあ る。 • 遷延するリスク因子はデポ剤使用や器質的脳疾患の合併 • 重篤な低酸素や長期間の高体温がなければほとんどの患者は神 経学的な後遺症を残さず回復する • 死亡率は5-20%と幅がある Neuroleptic malignant syndrome - UpToDate

20.

抗精神病薬の再開は? • 再開後10-90%が再発 • 再発のリスク因子は早期再開、高力価、経静脈投与、リチウムの併 用 • 再開が必要な場合 臨床的な後遺症がある場合は再開は2週間以上待つ 高力価より低力価を使用 低用量から開始し徐々に増量 リチウムとの併用は避ける 脱水を避ける NMSの症状を慎重に観察 Neuroleptic malignant syndrome - UpToDate

21.

おまけ

22.

中毒のときにみてほしいもの • バイタル(UP系?DOWN系?) • 瞳孔(散瞳?縮瞳?) • 皮膚(湿潤?乾燥?) • 腸蠕動音(亢進?減弱?) • 反射、クローヌス(亢進?減弱?) • 心電図(QT延長?QRS延長?)

23.

トキシドローム(中毒+症状) https://ddxof.com/toxidromes/?sf_action=get_data&sf_data=all&_sf_s=toxidrome

24.

トキシドローム 意識 体温 血圧 心拍 呼吸回数 瞳孔 皮膚・粘膜 腸蠕動 反射 その他 コリン作動性 抑制、混乱 → → ↓ → ↓ 湿潤 ↑ →/↓ 筋線維性攣縮、 痙攣 オピオイド 抑制 →/↓ →/↓ →/↓ ↓ → → ↓ →/↓ 鎮静・催眠薬 抑制 →/↓ →/↓ →/↓ ↓ → → → →/↓ 交感神経興奮性 覚醒、興奮 ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ 湿潤 ↑ ↑ 痙攣 抗コリン性 抑制、混乱、幻 覚 ↑ →/↑ ↑ → ↑ 乾燥 ↓ → 痙攣 セロトニン症候群 興奮、昏睡 ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ 湿潤 ↑ ↑(クローヌ ス+) 筋緊張↑(下肢 優位) 悪性症候群 昏迷、覚醒、無 言、昏睡 ↑ ↑ ↑ ↑ → 湿潤、蒼白 →/↓ ↓ 鉛管様筋強剛 悪性高熱症 興奮 ↑ ↑ ↑ ↑ → 湿潤、網状皮斑 ↓ ↑ 死後硬直様の 筋強剛 DOWN系 UP系 超UP系 N Engl J Med 2005;352:1112-20 Emerg Med Clin North Am. 2002 Feb;20(1):223-47

25.

心電図(QT延長?QRS延長?) • QT延長:抗精神病薬、三環系、SSRI K4.5-5 mEq/L目標に補正、Mg投与も検討 TdPならMg投与(1-2g=8-16 mEqを緩徐に静注、必要なら続けて 3-20mg/minで持続投与) 例) 硫酸Mg補正液1 mEq/mL®(20 mL1A)0.5 A 緩徐に静注(0.5A=Mg1.25g) 硫酸Mg補正液1 mEq/mL2A+生食(計48mL)2-10mL/hで持続静注(3.4-17mg/min) • QRS延長:三環系、抗精神病薬 QRS>100 msecなら炭酸水素ナトリウム1-2 mEq/kgをpH7.45-7.55 目標に繰り返す静注 例)メイロン7%250mL 0.5袋30分かけて点滴(104 mEq) メイロン7%=0.833mEq/mL 半袋でだいたい100mEq INTENSIVIST 2017年3号 中毒

26.

精神科的緊急疾患 臨床中毒学第1版 Catatonia in adults: Epidemiology, clinical features, assessment, and diagnosis - UpToDate Catatonia: Treatment and prognosis – UpToDate Parkinsonism Relat Disord. 2017 Mar;36:3-9 • 悪性症候群:高体温、筋強剛、振戦などパーキンソニズム、CK高値、意識障害。抗精神病薬開始1か月以内や抗パ薬中止で ミダゾラム3-20 mg/h(軽症-中等症) ブロモクリプチン(パローデル)2.5 mg1日2-3回経腸投与(必要に応じて45 mg/日まで増量)(中等症-重症) ダントロレン(ダントリウム)1-2.5 mg/kg静注(重症)。高体温、筋強剛改善すれば1 mg/kg6時間毎に静注。48時間後より漸減もしくは50-200 mg/日の経腸投与に変更 • 悪性緊張病(カタトニア):昏迷、カタレプシー、蝋屈症、無言症、拒絶症、反響言語。悪性は+自律神経症状。気分障害 (特に双極性障害)>統合失調症。抗精神病薬で誘発、増悪し得る。 抗精神病薬中止。チャレンジテスト:ロラゼパム1-2 mg(ジアゼパムなら5-10 mg)静注して5-10分後に症状軽減あり。悪性カタトニアはECTが 1st(発症4日以内の施行で死亡率低下) • 急性ジストニア:頸部、舌、顎など無意識に体が動いてしまう。斜頸、頚部後屈、眼球上転発作。抗精神病薬で 被疑薬中止で1-2日で改善。症状強ければ抗コリン薬考慮。ビペリデン(アキネトン)5-10mg筋注、アーテン1mg内服、ジフェンヒドラミン 50mg静注などの抗ヒスタミン薬(Parkinsonism Relat Disord. 2017 Mar;36:3-9) 。ポララミン5mg、アタラックスPも効くかも? ビペリデン5-10mg筋注。無効であればジアゼパム5-10mg緩徐に静注(臨床中毒学)。 • アカシジア:静座不能(じっとしていられない)。抗精神病薬で ビペリデン5-10mg筋注。無効であればジアゼパム5-10mg緩徐に静注(臨床中毒学) 。 • セロトニン症候群:高体温、腱反射亢進・クローヌス、分泌液だらだら。SSRIなどで(バルプロ酸、リチウム、トラマドール、 メトクロプラミドなど制吐薬、鎮咳薬も) 通常は薬剤中止後24時間以内に症状は自然消褪。重症例ではペリアクチン4-24mg/日、4時間毎に経口投与検討

27.

劇症肝炎 • 急性肝不全のうち初発症状出現後8週以内に,高度の肝機能異 常に基づいて昏睡度Ⅱ度(羽ばたき振戦)以上の肝性脳症をき たし、プロトロンビン時間が40%以下のものを劇症肝炎と呼ぶ。 • 現在は急性肝不全、昏睡型に分類される。 • 薬物や化学物質による中毒、虚血性肝障害、うっ血肝、妊娠脂 肪肝、Reye症候群、血液悪性腫瘍の肝浸潤・ウィルソン病など の代謝疾患・肝切除後ないし肝移植後の肝不全などの非肝炎例 は劇症肝炎からは除外するが、急性肝不全に含める。 • 肝炎発症から脳症発現時期により、急性(10日以内)、亜急性 (11日~8週)、遅発性(8~24週)に分類する。 日本医事新報 (5014): 37-37, 2020

28.

劇症肝炎の治療 • 血漿交換+HDF(浄化効率の高いonline HDFやCHDFが望ましい) • 改善を認めない場合は肝移植も考慮 • 原則として絶飲食で、糖液を基本とした輸液を行う。意識障害 の改善を認めれば、低蛋白の肝不全食の摂取 • 改善乏しければステロイド0.5~1.0mg/kg/日(使用は短期間に 留める) • 劇症肝炎での脳症に対し、特殊組成アミノ酸輸液(アミノレバ ン)は用いない(脳症を増悪させる恐れがある)。 日本医事新報 (5014): 37-37, 2020

29.

肝移植の禁忌 • 絶対禁忌:脳出血や痙攣を伴う不可逆的な脳損傷、制御困難な 活動性の感染症。 • 相対的禁忌:悪性腫瘍の合併、制御困難な消化管出血、呼吸・ 循環系の合併症による耐術困難、コントロール不良の精神疾患な ど。 日本医事新報 (5014): 37-37, 2020