20211112 ウレアーゼ産生菌による高アンモニア血症

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September 12, 22

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見習い芸人

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1.

2021/11/12 カンファレンス ゴールデンウィークの憂鬱

2.

68歳男性 構音障害 【現病歴】 • 1週間ほど前から活気不良と食思不振があった。よくトイレ に行くようになった。 • 4日前、自動車運転が30 km/h程度とやけに遅く、ぼーっとし ていると妻に指摘されていた。 • 2日前、普段より動作が緩慢だった。 • 受診前日には呂律障害を認めたが1日横になり経過を見た。 • 受診当日5時、新聞配達から帰宅後、リビングに座り失禁し ており呼びかけても反応が乏しく救急受診となった。

3.

【既往歴】 左肩腱板損傷、左踵骨骨折 【アレルギー】 なし 【薬剤歴】 常用薬なし、サプリ・漢方もなし 【生活歴】 職業:新聞配達 家族構成:妻と二人暮らし 喫煙:never smoker 飲酒:なし ADL:自立

4.

【身体所見】 37.0℃、BP165/118 mmHg、HR94/分、整、Sat 96%(RA)、RR20/分 E4V4M6 全身状態:会話可能だが、ぼうっとしている 神経:瞳孔(4mm/4.5mm)、対光反射鈍 眼球運動は指示入らず評価困難、眼振なし 挺舌正中、カーテン徴候陽性(口蓋垂は左に偏位?) 顔面麻痺なし、温痛覚・触覚低下・左右差なし 上肢バレー徴候陽性?(両上肢下降) 上肢MMT5/5 negative myoclonusあり

7.

頭部画像 • • 頭部CT:頭蓋内出血や明らかな梗塞巣・占拠性病変認めず 頭部MRI:DWIで信号異常認めず。出血・占拠性病変認めず。

9.

negative myoclonus(羽ばたき振戦)

10.

腹部CT • • • • • • 尿道カテーテル留置後 水腎なし 膀胱壁肥厚 前立腺腫大 腎形態は異常なし 腹水貯留なし

11.

尿塗抹(グラム染色) 白血球1+(activeな白血球は認めず) GPC chain3+ GNR small3+ 明らかな貪食像なし

12.

経過 • • • • • 腹部エコーで膀胱内に尿貯留著明、前立腺48mL程度 尿塗抹(グラム染色)でGPC chain3+、GNsR3+程度認めるも白 血球1+程度(多核白血球はほぼ認めず) グラム染色からは尿路感染症は積極的には疑わず無症候性細 菌尿として抗菌薬フリーで経過観察 尿閉に対し尿道カテーテル留置後約1400 mL排尿あり 翌日には意識状態も回復、negative myoclonusも消失した

13.

アンモニア血中濃度の推移 X day(入院日) 215 μg/dL 尿道カテーテル留置 入院日 X+1日 60 μg/dL X+4日 44 μg/dL

14.

尿培養 • • Entericoccus faecalis 嫌気性グラム陰性桿菌→Campylobacter ureolyticus(質量分析器 で同定) →尿素寒天基礎培地によるウレアーゼ活性試験ではいずれも陰 性(Entericoccus faecalisは培地には発育したが陰性) (※培地に発育した菌種のウレアーゼ活性を見るもので、嫌気 性菌などこの培地で発育しない菌種のウレアーゼ活性について は評価できない)

15.

Gull wing? 尿のカモメはCampylobacter ureolyticusかも?

16.

高アンモニア血症の症状 Ann Clin Biochem 2012; 49: 214–228

17.

肝不全以外が原因の高アンモニア血症 アンモニア排泄の低下 先天代謝異常症(IEMs):尿素サイクル異常症(OTC欠損症など)、有機酸代謝異常症*、脂肪酸代謝異常症* カルニチン欠乏症* 先天性門脈体循環シャント* 門脈血栓症(PVT) 薬剤:バルプロ酸、トピラマート、グリシン、カルバマゼピン、リバビリン、スルファジアジン、トラネキサム酸、リツキシマ ブ、サリチル酸** 循環血漿量減少性ショック、うっ血性心不全(肝細胞障害によるグルタミン合成酵素活性低下) アンモニア産生の増加 筋代謝亢進:痙攣、飢餓、外傷 中心静脈栄養(TPN)(高蛋白負荷) 多発性骨髄腫、白血病(異化亢進) ウレアーゼ産生菌による感染症:Proteus mirabilis、Escherichia coli、Klebsiella 抗癌剤:シタラビン、ビンクリスチン、エトポシド、L-アスパラギナーゼ、シクロフォスファミド、5-フルオロウラシル アミノ酸の過剰な負荷/異化亢進:消化管出血、カヘキシア+高蛋白食、ステロイド、術中のグリシン使用、アルギニン欠乏 *小児期に発症することが多い **他の素因がある場合 Ann Clin Biochem 2012; 49: 214–228 Clin Liver Dis (Hoboken). 2020 Jun 30;15(6):223-227 Pediatr Nephrol(2012)27:207-222

18.

先天代謝異常による高アンモニア血症 尿素サイクル異常症 • オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症 • カルバモイルリン酸合成酵素(CPS)欠損症 • アルギニノコハク酸合成酵素(ASS)欠損症(シトルリン血症) • 新生児一過性高アンモニア血症(THN) Pediatr Nephrol(2012)27:207-222

19.

尿閉と高アンモニア血症 • 通常では尿中に排泄 されるべきアンモニアが、尿閉により膀胱 内圧 が上昇すると、膀胱周囲の静脈叢を介して血中 に再吸収 されるようになる。 • 門脈系を介さず、体循環へ直接アンモニアが運ばれるため、肝 臓 での代謝・分解機構が機能しない。 • ウレアーゼ産生菌(Corynebacterium urealyticum、Proteus mirabilis、 Pseudomonas aeruginosa、Klebsiella属、Morganella morganii等)が 原因となる。 日内会誌 108:100~107,2019

20.

尿pH≧8はウレアーゼ産生菌の存在を疑う 尿中分離細菌のウレアーゼ活性の陽性率はProteus、Morganella、Klebsiellaで 90%以上、Citrobacter、Enterobacter、Pseudomonasは一部陽性、E. coliは0% 泌尿器科紀要 (1989), 35(2): 277-281

21.

尿路感染症がなくてもよい? • 抗菌薬使用なしでも高アンモニア血症が改善した症例あり • 79歳女性、尿閉(出血性膀胱炎)あり尿道カテーテル留置でア ンモニアは速やかに低下。抗菌薬投与なし • 尿培養でClostridium pseudodiphtheriticum検出 臨床神経 2017;57:130-133 尿閉+ウレアーゼ産生菌だけで高アンモニア血症を来し得る

22.

ウレアーゼ産生菌でなくてもよい? • 意識障害を伴う尿路感染の患者67例中 5 例で高アンモニア血症を認め たが、いずれもウレアーゼ産生菌は検出されなかったとの報告あり。 PLoS ONE 10(8): e0136220 • Bacteroides ureolyticus(新菌名表記ではCampylobacter ureolyticus)のよ うにウレアーゼ活性をもつ嫌気性菌が関与しているにもかかわらず、 通常の培養では検出されなかっ た可能性が考えられる。 泌尿器科紀要 (2016), 62(8): 421-425 培養でウレアーゼ産生菌が検出されなかった場合、 ウレアーゼ活性をもつ嫌気性菌が関与しているかも?

23.

最終診断 • 尿閉を契機としたウレアーゼ産生菌による高アンモニア血症

24.

Take home message • • • • 尿閉を契機にウレアーゼ産生菌による高アンモニア血症、意 識障害を来した一例を経験した。 尿路感染症がなくても、尿閉のみで高アンモニア血症を来た し得る。 培養でウレアーゼ産生菌が検出されない場合は嫌気性菌の関 与も考慮する。 意識障害、高アンモニア血症の鑑別として尿閉を銘記してお く。

25.

表題の種明かし ゴールデンウィーク の 憂鬱 GW 憂い Gull Wing Urei Campylobacter ureolyticus Urease Campylobacter ureolyticusのウレアーゼ産生により 高アンモニア血症を来した一例